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こんにちは、今村です
このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。
まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。
「プールの匂いって好きですか?」
「プールの匂いって好きですか?」
突然ですが、この質問、ある程度の年齢の方なら懐かしい記憶が蘇ってくるのではないでしょうか。子どもの頃の夏、プールサイドの熱さに足を小刻みにしながら「早く入りたい!」とワクワクしていた記憶。
私は実は、そのプールの匂い(正確には塩素の匂い)が好きなんです。
…でしたが、ある事件以来、その感情が「激しいPTSD」に変わってしまいました。
大掃除のチャンス到来!
小さな実験用植物工場で働いていた頃の話です。
この実験施設では常に何かしらの野菜を栽培していて、全ての作物が同時に収穫期を迎えることは滅多にありません。言わば「満室御礼」状態が続いていたんです。
ところがついに、全ての野菜が収穫されるという奇跡の日がやってきました!
「これは大掃除のチャンス!」
実験用とはいえ、生き物を育てる環境です。蓄積した汚れや細菌をしっかり除去しなければいけません。
養液タンクに覗き込むと…
「うわっ…」
想像以上の汚れっぷり。養液が循環する過程で流れ込んだ微細な根の破片や、藻のようなものが溜まっていました。
「これは徹底的にやらなきゃ!」
次亜塩素酸ナトリウムの登場
清掃の最終段階、殺菌消毒です。
ここで登場するのが「次亜塩素酸ナトリウム」、いわゆる塩素系漂白剤の仲間です。プールの消毒にも使われる、あの独特の匂いの正体です。
理想的には、タンク内の養液を完全に排水してから使うべきもの。しかし、今掃除中のこの設備には設計上の問題があったのです。それは、完全な排水が難しく、10%の養液が残ったままになること。
「排水しても、だいぶ養液が残っちゃうな…」
本来なら何度か水で満たして排水する作業を繰り返すべきでした。でも翌日には次の実験が控えているという時間的プレッシャー。
「まぁ、仕方ないか…」
この「仕方ないか」が運命の分かれ道でした。
地獄への入場券
次亜塩素酸ナトリウムを投入し、循環ポンプをオン。「シャー」という音とともに液体が設備内を巡り始めます。
最初のうちは良かったのです。むしろ「プールの匂いってなんか懐かしいよね~」と鼻を鳴らしながら清掃を続けていました。
しかし10分ほど経った頃…
「ん?なんか目がしみる?」
さらに5分後…
「あれ?鼻水が…」
そして突然、
「うっ…うわああああ!」
目からは止めどなく涙が、鼻からは滝のような鼻水が噴出し始めたのです!
泣きながらの強制労働
実は起きていたのは、非常にシンプルな化学反応です。
残っていた養液(酸性)+ 次亜塩素酸ナトリウム(アルカリ性)= 塩素ガスの発生
中学校の理科で習ったはずなのに、すっかり忘れていました。
通常の使用量なら問題ないですが、養液の酸性が強かったのか、私が次亜塩素酸ナトリウムを入れすぎたのか…教科書通りの塩素ガス発生実験が植物工場内で繰り広げられていたのです。
「もう無理…中断しよう…」
しかし、翌日には次の実験開始。清掃を途中で投げ出すわけにはいきません。
扉を全開にして、それでも残る塩素ガスの洗礼を受けながら、まるで催涙ガスの中で作業するような状況に。
「こんなの第一次世界大戦の塹壕戦じゃないか…」
目は真っ赤に充血し、鼻水と涙でマスクはグショグショ、呼吸するたびに鼻腔がヒリヒリします。
蓄膿症持ちの悲劇
事態をさらに悪化させたのは、私が慢性的な蓄膿症持ちだったこと。
鼻の構造が複雑で入り組んでいる蓄膿症患者の鼻腔に、塩素ガスが入り込むとどうなるか…
「医学的に興味深い実験ですね」と言われそうですが、本人からすれば地獄以外の何物でもありません。
この一件の後、私の鼻はおよそ2週間、完全に機能停止。朝起きると口内乾燥がひどくて、まるで砂漠を舐めたような感覚でした。
教訓:化学は正直
結局、清掃は完了し、翌日の実験も予定通り始まりました。しかし私の鼻腔だけが犠牲になったのです。
この経験から学んだことは明確です:
- 養液に次亜塩素酸ナトリウムを直接入れてはいけない
- 必ず養液を完全に排水してから消毒する
- 「まぁ、仕方ないか」は危険信号
- 化学反応は感情抜きで正直に結果を出す
特に3つ目。「まぁ、仕方ないか」という言葉が頭をよぎったら、それは「絶対にやめた方がいい」というアラームだと心得るべきです。
あれから…
今でも私はプールの近くを通ると、無意識に足早に立ち去ろうとします。かつて「好き」だった塩素の匂いは、今や「トラウマの香り」に変わってしまいました。
植物工場で働く皆さん、清掃は大事ですが、くれぐれも化学の法則をないがしろにしないでください。あなたの鼻腔の健康のために…。
このコラムの掲載元は、現場力アップのノウハウ集
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植物工場や施設栽培をやられている方は、確認必須です。


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