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水耕栽培の苔・藻・アオコ対策【完全ガイド】原因と予防・除去法

こんにちは!水耕栽培を楽しんでいる皆さん、日々の成長を見るのは本当にワクワクしますよね。
でも、キラキラした水面や元気な根に、緑色のヌルヌルや白いふわふわが発生して「これは何だ!?」と困った経験はありませんか?
水耕栽培につきものとも言える、苔(コケ)、藻(モ)、カビ、そして謎の「白いふわふわ」。これらは見た目が悪いだけでなく、植物の生育を妨げたり、最悪の場合、枯らしてしまったりする厄介者です。
「どうして発生するの?」「どうすれば防げる?」「発生しちゃったらどうすればいい?」
そんなあなたの疑問や不安に、この記事でまるっとお答えします!
この記事では、水耕栽培アドバイザーとして多くのご相談を受けてきた経験から、
- 苔、藻、カビ、白いふわふわの正体と発生原因
- 発生を未然に防ぐための具体的な予防策
- 発生してしまった場合の安全な除去方法と対策
- 対策を行う上での注意点や季節ごとの管理ポイント
まで、網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。
この記事を読めば、厄介なトラブルの原因が分かり、自信を持って対策できるようになります。安心して、もっと水耕栽培を楽しめるよう、一緒に見ていきましょう!
1. なぜ発生?水耕栽培の厄介者たち:正体・原因・季節の影響
まずは敵を知ることから始めましょう。水耕栽培でよく見かける緑のヌルヌルや白いふわふわ。これらは一体何者で、なぜ発生しやすいのでしょうか?それぞれの特徴と原因、そして季節の影響について解説します。
1-1. 苔・藻・アオコ(緑色のヌルヌル系トラブル)
正体:
これらは基本的に「藻類(そうるい)」の仲間です。光合成をして増殖する、水中の小さな植物プランクトンと考えると分かりやすいでしょう。「苔」と呼ばれることも多いですが、厳密には陸上の苔とは少し違います。アオコは、特定の藻類(シアノバクテリアなど)が大量発生して、水面が緑の粉をまいたようになった状態を指します。
見た目の特徴:
容器の内側や培地(スポンジなど)の表面に、緑色や茶褐色のヌルヌル、あるいはフワフワしたものが付着します。ひどくなると、養液全体が緑色に濁ることもあります。
主な原因:
- 光: 藻類は光合成で増えます。養液や培地に光が当たることで、爆発的に増殖します。これが最大の原因です。
- 養分: 植物のために与えている養液の栄養分は、藻類にとってもご馳走です。特に窒素やリンが豊富だと発生しやすくなります。
- 水温: 一般的に水温が高い方が、藻類の活動は活発になります。
植物への影響:
- 養液中の酸素を奪い、根の呼吸を妨げます。
- 植物に必要な養分を横取りします。
- 大量発生すると水質を悪化させ、根腐れの原因になることも。
季節の影響:
夏場は特に注意が必要です。気温上昇による水温の上昇と、強い日差し・長い日照時間という、藻類が最も好む条件が揃いやすいため、爆発的に増えることがあります。
1-2. カビ・白いふわふわ(菌類系トラブル)
正体:
こちらは「菌類(きんるい)」の仲間です。光合成はせず、有機物を分解して栄養を得ます。水耕栽培で見かける「白いふわふわ」の多くは、このカビの一種である可能性が高いです。
見た目の特徴:
培地(特にスポンジやロックウール)の表面や、植物の株元、枯れた葉などに、白や灰色、黒っぽい色の、綿状・粉状・フワフワしたものが生えます。
主な原因:
- 高湿度: ジメジメした環境を好みます。
- 通気不良: 空気の流れが悪い場所、特に株元や培地表面で発生しやすいです。
- 有機物: 枯れた葉や根、培地自体(特に有機質のもの)が栄養源になります。
- 胞子の飛来: 空気中には常にカビの胞子が漂っており、条件が揃うとどこでも発生します。
植物への影響:
- 植物自体に寄生して病気を引き起こすことがあります(灰色かび病など)。
- 培地の通気性や水はけを悪化させ、根腐れを誘発することがあります。
- 見た目が悪く、衛生的にも好ましくありません。
季節の影響:
湿度が高く、空気が滞りやすい梅雨時期は特に注意が必要です。また、冬場でも、室内と室外の温度差で結露が発生しやすい場所や、暖房で換気がおろそかになりがちな環境では発生しやすくなります。年間を通して、風通しの悪い場所は常にリスクがあります。
2. 発生させないのが一番!今日からできる徹底予防策
苔・藻・カビは、一度発生すると除去が面倒なだけでなく、植物にも悪影響を与えます。だからこそ、「発生させない」ための予防が何よりも大切です。原因に基づいた、今日からできる具体的な予防策をご紹介します。
2-1. 【最重要】光を徹底的に遮断する(苔・藻・アオコ対策)
藻類の発生原因のトップは「光」です。養液や培地に光が当たらなければ、藻類は光合成ができず、増殖を大幅に抑えられます。これは最も効果的で、まず最初に取り組むべき最重要対策です!
- 容器の選定:
- 最初から遮光性のある容器(不透明なプラスチック製、陶器製など)を選びましょう。
- 透明な容器を使う場合は、外側をアルミホイル、遮光シート、黒い画用紙などで覆うか、濃い色のスプレー塗料(プラスチック用)で塗装します。
- 容器の加工(リサイクル素材活用例):
- ペットボトルを使う場合、アルミ缶をカットして外側に被せる、厚手の靴下を履かせる、といった工夫も有効です。
- ダンボール箱で栽培容器全体を覆うのも良い方法です。
- 培地表面のカバー:
- スポンジやロックウールなどの培地表面にも光が当たらないようにしましょう。
- アルミホイルや、専用のウレタンカバー、バーミキュライトなどで培地の表面を覆います。
- 定植パネルの穴の隙間からも光が入るので、隙間テープなどで埋めるのも効果的です。
2-2. 清潔な養液管理を心がける
養液は植物の命綱ですが、管理を怠ると藻類や雑菌の温床になります。
- 定期的な全量交換:
- 養液は継ぎ足しではなく、定期的に全て入れ替えましょう。交換頻度は栽培規模や環境によりますが、最低でも1〜2週間に1回が目安です。
- 夏場は水温が上がりやすく、藻類や雑菌が繁殖しやすいため、交換頻度を上げる(例: 週に1回)のがおすすめです。
- 適正な濃度:
- 養液は規定の濃度を守りましょう。濃すぎても薄すぎても植物の生育に影響が出ますし、濃すぎると藻類の発生を助長することもあります。
- 清潔な水の使用:
- 養液を作る際は、清潔な水道水を使いましょう。汲み置きの水を使う場合は、ゴミなどが入らないように注意が必要です。
2-3. 常にクリーンな環境を保つ
栽培容器や器具が汚れていると、そこから苔・藻・カビが広がることがあります。
- 器具の洗浄・消毒:
- 養液交換の際には、容器の内側をスポンジなどでこすり洗いし、ヌメリや汚れをしっかり落としましょう。
- 定期的に、栽培容器や関連器具(エアポンプのチューブなど)を洗浄・消毒することも有効です。消毒には、熱湯消毒や、安全性の高い食品添加物グレードの次亜塩素酸ナトリウム(使用後はよくすすぐ)などが使えます。
- 枯葉・ゴミの除去:
- 枯れた葉や花がら、培地に落ちたゴミなどは、カビの栄養源になります。見つけ次第、こまめに取り除きましょう。
- 栽培スペースの清掃:
- 栽培容器の周りも清潔に保ち、ホコリやゴミが溜まらないようにします。
2-4. 風通しを良くする(カビ・白いふわふわ対策)
カビは湿気が多く、空気がよどんだ場所を好みます。通気性を改善することが、カビ予防の鍵です。
- 設置場所の選定:
- できるだけ風通しの良い場所に栽培装置を設置しましょう。壁際や部屋の隅など、空気が滞留しやすい場所は避けます。
- サーキュレーターやファンの利用:
- 室内栽培で風通しが確保しにくい場合は、小型のサーキュレーターやUSBファンなどで、栽培スペースに穏やかな空気の流れを作りましょう。植物の葉が軽くそよぐ程度で十分です。
- 株間の確保:
- 植物が密集しすぎると、株元の風通しが悪くなり、湿度も高まります。適切な株間を空けて植え付け、葉が茂ってきたら適度に剪定することも大切です。
- 季節に応じた対応:
- 梅雨時期や湿度が高くなる季節は、特に意識して換気やサーキュレーターの利用を行いましょう。
2-5. 適切な湿度管理
カビは高湿度を好みます。過度な加湿は避け、適切な湿度を保つように心がけましょう。
- 過加湿の防止:
- 特に室内栽培の場合、加湿器の使いすぎに注意しましょう。植物の種類にもよりますが、一般的に湿度60%前後が目安です。
- 水やり(養液交換)の際に、葉や茎に直接水がかからないように注意することも、株元の湿度上昇を防ぐのに役立ちます。
- 換気の重要性:
- 定期的に窓を開けて換気するだけでも、湿気を排出し、新鮮な空気を取り入れることができます。
- 環境に応じた調整:
- 冬場の結露にも注意が必要です。窓際など結露しやすい場所に置く場合は、結露対策を行うか、設置場所を見直しましょう。季節や栽培環境に合わせて、湿度管理の方法を調整することが大切です。
2-6. 予防を習慣化するヒント
これらの予防策は、一度やれば終わりではありません。継続することが重要です。
- 毎日の短時間チェック:
- 水やりや植物の観察のついでに、1日1分でも良いので、容器の内側、培地表面、株元などをサッと確認する習慣をつけましょう。早期発見が、被害を最小限に抑えるコツです。
- タイミングを決める:
- 「週末に養液交換と容器の掃除をする」「毎朝、窓を開けて換気する」など、作業のタイミングを決めておくと、忘れずに続けやすくなります。
3. もし発生してしまったら?状況別・除去&対策法
どんなに予防していても、うっかり発生してしまうこともあります。でも、慌てないでください!早期発見・早期対処が肝心です。ここでは、問題の種類別に、具体的な除去方法と再発防止策を解説します。
3-1. 苔・藻・アオコが発生した場合
緑色のヌルヌルを発見したら、以下の手順で対処しましょう。
- 物理的除去:
- まずは、スポンジやキッチンペーパー、歯ブラシなどで、容器の内壁や培地表面に付着した苔・藻を物理的にこすり落とし、拭き取ります。取り除いたものは、すぐに捨てましょう。
- 手が届きにくい場所は、割り箸にキッチンペーパーを巻き付けたものなどが便利です。
- 養液の全量交換:
- 物理的除去と合わせて、必ず養液を全て交換します。この時、容器をきれいに洗浄するのを忘れずに。
- 安全に配慮した化学的・自然的対策(補助として):
- 木酢液(もくさくえき)や食酢(穀物酢など)を、ごく薄めた濃度(例:水1Lに対し数滴〜小さじ1/2程度)で養液に添加する方法があります。これらは殺菌・静菌効果が期待できますが、濃度が高すぎると植物の根を傷める可能性があるので、必ずごく少量から試し、植物の様子を見ながら調整してください。特に食酢はpHを下げる効果もあるため注意が必要です。
- その他、市販されている水耕栽培用の藻類抑制剤などもありますが、使用する場合は必ず食用作物に使用可能かを確認し、用法・用量を厳守してください。個人的には、まずは物理除去と遮光の徹底をおすすめします。
- 遮光の再徹底:
- 最も重要な再発防止策です。どこから光が漏れているのかを再度チェックし、容器の遮光、培地表面のカバーなどを徹底しましょう。これが不十分だと、いくら除去してもすぐに再発します。
3-2. カビ・白いふわふわが発生した場合
培地や株元にカビや白いふわふわを見つけたら、以下の対策を行います。
- 物理的除去:
- 清潔なティッシュペーパーや綿棒などで、カビをそっと拭き取ります。胞子をまき散らさないように注意しましょう。
- カビが生えた部分が培地の一部であれば、その部分だけを慎重に取り除くことも有効です。
- カビが生えた枯葉などは、すぐに取り除いて処分します。
- 安全に配慮した化学的・自然的対策(補助として):
- 木酢液や食酢を薄めた液、あるいは重曹を水に溶かした液(例:水500mlに重曹小さじ1/2程度)を、カビの発生箇所にスプレーする方法があります。これらも植物への影響を考慮し、ごく薄い濃度から試すようにしてください。スプレーは、植物の葉や茎に直接かからないように注意し、できれば培地表面のみに軽く噴霧するのが安全です。
- 市販の殺菌剤もありますが、苔・藻と同様に、食用作物への安全性を必ず確認し、用法・用量を守ることが大前提です。安易な使用は避け、まずは物理除去と環境改善を優先しましょう。
- 環境改善の徹底(通気・湿度):
- カビ発生の根本原因である高湿度と通気不良を改善することが、再発防止に不可欠です。
- サーキュレーターの設置や位置調整、換気の頻度アップ、株間の確保、適切な剪定など、「2-4. 風通しを良くする」「2-5. 適切な湿度管理」で紹介した予防策を、より徹底して行いましょう。
- 根の状態確認:
- 培地にカビが発生した場合、根にも影響が出ている可能性があります。可能であれば、植物をそっと持ち上げて根の状態を確認しましょう。根が茶色く変色していたり、ヌルヌルしていたりする場合は、根腐れの兆候かもしれません。傷んだ根は清潔なハサミでカットし、養液交換と環境改善を徹底します。
3-3. 設備を用いた対策(オプション)
より高度な対策として、以下のような設備を利用する方法もあります。ただし、導入コストや注意点も理解しておく必要があります。
- UV-Cライト(紫外線殺菌灯)による殺菌:
- 養液を循環させるシステムの場合、循環経路にUV-Cライトを設置することで、養液中の藻類や雑菌を殺菌する効果が期待できます。
- 導入コスト: 専用の装置が必要なため、初期費用がかかります。
- 効果: 養液中の浮遊している藻類や菌には効果がありますが、容器壁面や培地に付着したものには直接的な効果は限定的です。遮光などの基本対策と併用することが前提です。
- 安全性に関する注意点: UV-C(深紫外線)は人体(特に目や皮膚)に有害です。直接光を見たり、皮膚に当てたりしないよう、安全な設計の装置を選び、取り扱いには十分注意が必要です。また、一部のプラスチック素材を劣化させる可能性もあります。
4. 対策を行う上での大切な注意点
予防策や除去法を実践する際には、いくつか注意しておきたい大切なポイントがあります。安全かつ効果的に対策を進めるために、以下の点を必ず心に留めておきましょう。
4-1. 安全性への配慮(薬剤選択の基本)
- 食用作物への使用は慎重に:
- 特に野菜やハーブなど、食べる目的で育てている植物に薬剤(化学的なもの、自然由来のものを含む)を使用する場合は、人体への安全性を最優先に考えましょう。
- 「食用作物に使用可能」と明記されているものを選び、記載された使用方法(濃度、使用時期、回数など)を厳守してください。不明な点があれば、安易に使用しないことが賢明です。
- まずは物理的除去と環境改善から:
- 薬剤の使用は、あくまで補助的な手段と考えましょう。まずは、こすり洗いや拭き取りといった物理的な除去と、遮光、通気・湿度改善といった環境の見直しを徹底することが基本です。これだけで解決することも少なくありません。
4-2. 植物への影響を最小限に
- 濃度は必ず守る:
- 木酢液、食酢、重曹水などを使用する場合、「濃い方が効くだろう」と自己判断で濃度を上げるのは絶対にNGです。規定濃度や推奨されている希釈倍率を守らないと、植物の根や葉を傷め、枯らしてしまう原因になります。「薄すぎるかな?」と感じるくらいから試すのが安全です。
- テスト実施のすすめ:
- 初めて使う薬剤や資材は、いきなり全ての植物に使用するのではなく、まずは一部の植物や、目立たない箇所で試して、数日間様子を見る(パッチテストのようなイメージ)ことをお勧めします。植物に異常が出ないかを確認してから、全体に適用するようにしましょう。
4-3. 根本原因の解決が不可欠
- 対症療法だけでは再発する:
- 苔やカビを除去しても、発生した根本的な原因(光の侵入、高湿度、通気不足など)が改善されていなければ、すぐに再発してしまいます。
- 除去作業と同時に、「なぜ発生したのか?」を考え、その原因を取り除く対策(遮光の強化、換気の改善、置き場所の変更など)を必ず行いましょう。これが、長期的にトラブルを防ぐ最も重要なポイントです。
4-4. ペットや小さなお子さんがいる場合の注意点
- 薬剤の誤飲・接触リスク:
- 薬剤(特に化学的なもの)を使用・保管する際は、ペットや小さなお子さんが誤って口にしたり、触れたりしないように、細心の注意を払いましょう。保管場所を工夫したり、作業中は近づけないようにするなどの配慮が必要です。
- 木酢液や食酢なども、原液は刺激が強い場合があるので、同様に注意が必要です。
- 物理的な安全確保:
- 栽培容器を覆うアルミホイルやシート、設置したサーキュレーターのコードなどが、ペットや子供のいたずらの対象にならないよう、設置場所や配線などを工夫し、安全を確保しましょう。容器が倒れたりしないよう、安定した場所に置くことも大切です。
4-5. 季節ごとの管理ポイント再確認
- 環境の変化に対応する:
- 季節によって、日差しの強さ、日照時間、気温、湿度は変化します。これに伴い、苔・藻・カビの発生しやすさも変わってきます。
- 例えば、夏は遮光をより強化し、養液交換の頻度を上げる、梅雨時期は換気を特に意識する、冬は結露に注意するなど、季節の変化に合わせて、予防策や管理方法(遮光の度合い、換気頻度、養液交換頻度など)を柔軟に見直すことが、年間を通して安定した栽培を続けるコツです。
5. これで解決!よくある質問 (Q&A)
ここでは、水耕栽培の苔・藻・カビ対策に関して、特に多く寄せられる質問にお答えします。
Q1: ちゃんと遮光しているはずなのに、すぐに苔(藻)が生えてきます。なぜ?
A1: いくつか原因が考えられます。
- わずかな光漏れ: 容器の蓋の隙間、定植パネルの穴の隙間、培地の隙間など、自分では気づかないようなわずかな箇所から光が侵入している可能性があります。もう一度、あらゆる角度から光が漏れていないか、徹底的にチェックしてみてください。隙間テープなどで目張りするのも有効です。
- 養液交換時の混入: 養液交換の際に、空気中や器具に付着していた藻類の胞子が混入し、わずかな光でも増殖してしまうことがあります。交換時は手早く行い、容器や器具を清潔に保つことが大切です。
- 培地内部からの発生: スポンジなどの培地内部にすでに藻類が入り込んでいる場合、表面をカバーしても内部で増殖し、表面に出てくることがあります。この場合は、培地ごと交換するか、より念入りな洗浄・消毒が必要になるかもしれません。
Q2: 培地に生えた「白いふわふわ」、これってカビですか?害はありますか?
A2: 多くの場合、それはカビ(糸状菌)の一種である可能性が高いです。空気中の胞子が付着し、湿度や通気などの条件が揃うと発生します。
- 害について: すべてのカビが植物に直接的な病害を引き起こすわけではありませんが、見た目が悪く、不衛生です。また、カビが大量に発生すると培地の通気性や水はけを悪化させ、間接的に根の健康を損なう(根腐れを誘発するなど)可能性があります。種類によっては植物に病気を引き起こすものもあるため、見つけたら早めに対処(除去と環境改善)するのが賢明です。
Q3: 木酢液や食酢を使いたいのですが、どれくらいの頻度で使えばいいですか?植物への影響が心配です。
A3: 木酢液や食酢は、あくまで予防や初期段階での対策、あるいは物理除去後の再発防止として補助的に使うのがおすすめです。
- 頻度: 常用するのではなく、苔やカビの兆候が見られた時や、養液交換時にごく少量添加する程度に留めるのが安全です。頻繁に添加すると、養液のpHバランスが崩れたり、植物にストレスを与えたりする可能性があります。
- 影響: 最も心配なのは濃度です。必ずごく薄い濃度(推奨:水1Lに対し数滴〜多くても小さじ1/2程度から試す)から始め、植物の葉の色やつや、根の状態に変化がないか、注意深く観察してください。少しでも異変を感じたら、すぐに使用を中止し、養液を交換しましょう。初めて使う場合は、前述の通り部分的なテストをお勧めします。
Q4: 冬場は乾燥しているはずなのに、カビが発生しました。なぜ?
A4: 冬場でもカビが発生する原因はいくつか考えられます。
- 結露: 暖房の効いた室内と、冷たい窓際などとの温度差で、容器の表面や培地、壁などに結露が発生し、局所的に湿度が高くなっている場合があります。
- 換気不足: 寒さのために窓を閉め切っている時間が長くなり、室内の空気が滞留して湿気がこもりやすくなっている可能性があります。
- 加湿器の使いすぎ: 乾燥対策のつもりの加湿器が、かえってカビの発生を招いている場合もあります。
対策としては、結露しやすい場所を避ける、定期的な換気を心がける、サーキュレーターで空気を循環させる、加湿器の設定を見直すなどが有効です。
Q5: UV-C殺菌灯は効果がありますか?導入すべき?
A5: UV-C殺菌灯は、養液中を浮遊する藻類や雑菌の殺菌には一定の効果が期待できます。特に養液を循環させるシステムでは有効な場合があります。
- ただし、万能ではありません。 容器壁面や培地に付着した苔・藻・カビには直接的な効果は低いです。また、導入にはコストがかかり、紫外線による人体への影響や素材の劣化といった注意点もあります。
- 導入の判断: まずは遮光、清潔な管理、通気・湿度改善といった基本的な対策を徹底することが最優先です。それでも問題が解決しない場合や、より高度な管理を目指す場合に、オプションとして検討するのが良いでしょう。導入する際は、製品の安全性や特性をよく理解した上で判断してください。
まとめ
今回は、水耕栽培で多くの人が悩む苔、藻、カビ、そして白いふわふわの対策について、原因から予防、除去方法、注意点まで詳しく解説してきました。
この記事のポイントを振り返ってみましょう:
- 苔・藻・アオコ(緑のヌルヌル): 主な原因は光と養分。対策の鍵は徹底的な遮光と清潔な養液管理。
- カビ・白いふわふわ: 主な原因は高湿度と通気不良。対策の鍵は風通しの改善と適切な湿度管理、そして清潔な環境維持。
- 予防が最重要: 発生させないための地道な対策(遮光、清掃、換気、養液管理)が、結局は一番の近道です。
- 発生したら早期対処: 物理的な除去を基本とし、必要に応じて安全に配慮した対策を補助的に行い、根本原因の改善を忘れずに。
- 安全第一: 特に食用作物の場合、薬剤の使用は慎重に。植物への影響、ペットや子供への配慮も忘れずに。
- 季節に応じた管理: 環境の変化に合わせて、対策を柔軟に見直しましょう。
水耕栽培のトラブルは、原因を知り、適切な対策を講じれば、十分にコントロールできます。最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、基本的なポイントを押さえ、日々のちょっとした観察と手入れを習慣にすれば、きっと快適に水耕栽培を楽しめるはずです。
もし困ったことがあれば、この記事を参考に、一つ一つ試してみてください。また、経験豊富な人のブログやSNS、オンラインコミュニティなどで情報を交換するのも良い方法です。
苔や藻も、見方を変えれば自然の一部。完全にゼロにするのが難しい場合もありますが、植物の生育に大きな支障がないレベルでコントロールできれば良い、と考えるのも一つの付き合い方かもしれませんね(観賞用アクアリウムなどでは、あえて苔を生やすこともあります)。
さあ、今日からできる対策を始めて、あなたの水耕栽培ライフをもっと豊かで楽しいものにしていきましょう!応援しています。
