【植物工場の成功事例】10年以上現場経験を持つ私が語る、収益改善のリアル

こんにちは、今村です

「植物工場って儲かるの?」

新規参入や事業拡大を検討する中で、誰もが抱く疑問でしょう。

実際、植物工場は設備投資やランニングコストが大きいため、収益化は容易ではありません。
しかし、諦めるのはまだ早いです!

適切な戦略と改善行動によって、収益を改善し、成功を収めている事例は数多く存在します。

この記事では、10年以上植物工場の現場で最前線で働いてきた私の経験を踏まえ、具体的な成功事例を3つの領域に分け、収益改善のポイントを解説します。

これから植物工場を始めようと考えている方、既存の植物工場で収益改善を目指している方、必見です!

目次

1. データ活用による収益改善

植物工場では、環境データ、生育データ、作業データなど、様々なデータを取得できます。

これらのデータを分析・活用することで、収量増加、品質向上、コスト削減など、多岐にわたる改善を実現できます。

1-1. データ分析による収益向上

事例:高知県安芸市のナス農家「分ち合ふ農園」では、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトに参加し、環境データや経営データを分析することで、収量増加やコスト削減を実現し、収益向上につなげています。

最近の生産コストを反映した施設園芸経営収支のモデル分析事例集および農業用ハウス設置コスト低減事例集(一般社団法人 日本施設園芸協会)

ポイントは、従来の年次会計から、栽培期間に合わせた会計に移行し、月々の経費や売上を把握することで、問題点の早期発見と対策を可能にしたことです。

例えば、青色申告決算書のデータ分析から、重油価格や資材費の上昇が所得金額の低下に繋がっていることを把握しました。
そこで、

  • 夜間の加温時間帯を調整し、重油使用量を削減
  • 高濃度CO2施用で効果的に光合成を促進し収益増を見込む
    といった対策を講じています。

私の経験から言っても、データ分析による現状把握は非常に重要です。

感覚だけに頼らず、数値に基づいて現状を把握することで、改善すべきポイントが明確になり、効果的な対策を打てるようになります。

1-2. 直売による収益貢献

事例:同じく高知県安芸市のナス農家「分ち合ふ農園」では、直売による収益確保にも成功しています。

地方都市近郊の農家にとって、契約販売などに比べて、輸送コストや手数料などの負担を軽減できる直売は、収益確保に有効な手段です。

最近の生産コストを反映した施設園芸経営収支のモデル分析事例集および農業用ハウス設置コスト低減事例集(一般社団法人 日本施設園芸協会)

直売所の運営は、顧客との距離が近く、生の声を聞けるというメリットもあります。

顧客ニーズを把握し、それに応じた商品開発や販売戦略を行うことで、更なる収益向上を目指せるでしょう。

1-3. 生育状況に応じた環境制御

事例:兵庫県神戸市のトマト・イチゴ農家「(株)東馬場農園」では、各種センサーデータ(温度、湿度、CO2 濃度、光など)を活用し、環境制御を行うことで、生産性の向上と収益性の向上を目指しています。

生育ステージや季節に合わせて環境制御の基準を作成し、さらに日々の天候に応じて設定を変更することで、よりきめ細やかな環境管理を実現している点が特徴です。

スマートグリーンハウス転換の手引き~導入のポイントと実践の事例~(一般社団法人 日本施設園芸協会)

生育状況に応じた環境制御は、植物の生育を最適化し、収量増加や品質向上に大きく貢献します。

しかし、適切な環境条件は、作物や品種、生育ステージによって異なるため、データ分析に基づいて最適な環境条件を常に模索していく姿勢が重要です。

2. 人材育成による改善

植物工場の成功には、人材の確保と育成が欠かせません。

特に、大規模経営では、組織体制の整備や人材育成の仕組みづくりが、従業員の定着率向上や生産性向上に繋がります。

2-1. 組織体制の整備と従業員定着率向上

事例:神奈川県藤沢市のトマト農家「(株)井出トマト農園」では、経営コンサルタントの指導のもと、組織体制の整備や従業員との情報共有を強化した結果、従業員の定着率が改善しました。

具体的には、企業理念や規則、財務諸表などをまとめた「コーポレートカルチャーブック」を作成し、全従業員に配布しています。

組織内の情報を透明化し、従業員の理解と納得感を高めることで、帰属意識やモチベーション向上に繋がった好例です。

大規模施設園芸・植物工場 導入・改善の手引き(一般社団法人 日本施設園芸協会)

従業員が安心して長く働ける環境を作ることは、人材の定着率向上だけでなく、技術やノウハウの継承にも繋がります。

これは、長期的な安定経営を実現する上で非常に重要な要素です。

2-2. 生産性向上に向けた独自のシステム開発

事例:同じく「(株)井出トマト農園」では、従業員の作業実績をリアルタイムに把握できるシステムを導入することで、従業員一人ひとりの生産性向上を促進しています。

このシステム導入により、人時生産性が1.6倍に増加したという結果が出ています。

大規模施設園芸・植物工場 導入・改善の手引き(一般社団法人 日本施設園芸協会)

従業員の作業状況を可視化することで、課題を明確化し、改善意識を高めることができます。

また、従業員同士で実績を比較できる仕組みは、競争意識を促進し、モチベーション向上にも繋がります。

2-3. 従業員満足度向上のための取り組み

事例:経営体プロ大規模施設に参画している次世代施設園芸拠点では、従業員の意向や意見を反映した労働環境改善や、情報共有の機会を増やすなどの取り組みが、従業員の満足度向上に繋がっています。

例えば、パート従業員を含めて会社への貢献に対して賞与額に差をつけるなど、従業員のモチベーション向上を目的とした取り組みが行われています。

大規模施設園芸における組織づくりと人的資源管理(農研機構)

従業員の意見を積極的に聞き取り、働きやすい環境作りに取り組むことは、従業員満足度向上に繋がり、ひいては定着率向上や生産性向上に繋がります。

2-4. 技術力向上のための研修

事例:次世代施設園芸北海道拠点「苫東ファーム(株)」では、社員やパート従業員に対して、栽培技術の向上や、病害虫の早期発見と対策などを目的とした研修を定期的に実施しています。

特に、パート従業員は、日々の作業を通して作物の生育状況を把握する重要な役割を担っているため、病害虫の早期発見や適切な収穫判断ができるように、研修を通して知識や技術の向上を図っています。

北海道における太陽光利用型の施設園芸導入マニュアル(いちご)(農研機構)

研修は、従業員のスキルアップだけでなく、新しい技術や知識の導入、情報の共有、意識統一など、様々な効果をもたらします。

3. 設備投資による改善

植物工場では、初期投資が大きな負担となります。
しかし、適切な設備投資は、長期的な視点で見れば、生産性向上やコスト削減に繋がり、収益改善に大きく貢献します。

3-1. 中古ハウスのリノベーション

事例:高知県安芸市のナス農家「分ち合ふ農園」では、事業拡大に伴い、中古ハウスを入手し、リノベーションを行うことで、初期投資を抑えつつ、必要な設備を導入しています。

ポイントは、既存のハウス構造を活かしながら、必要な設備を段階的に導入していくことで、費用対効果の高いリノベーションを実現したことです。

具体的には、

  • 老朽化した外張りおよび内張りを張り替え
  • 谷換気装置の設置
  • オークションで購入した重油暖房機と耐震重油タンクを設置
  • 養液土耕装置と日射比例給液制御装置を設置
  • UECS環境制御盤の設置による統合環境制御と、Thinking Farmによる環境・光合成モニタリング

などを行い、中古ハウスを最新設備を備えた施設へと生まれ変わらせました。

最近の生産コストを反映した施設園芸経営収支のモデル分析事例集および農業用ハウス設置コスト低減事例集(一般社団法人 日本施設園芸協会)

分ち合ふ農園では、リノベーション費用の一部を高知県園芸用ハウス等リノベーション事業の補助金で賄っています。

補助金の活用は、初期投資の負担軽減に大きく貢献します。
積極的に情報収集を行い、活用できる制度がないか検討してみましょう。

ただし、中古ハウスの状態をよく確認し、必要な設備や改修費用をしっかりと見極めることが重要です。

3-2. 自走式防除機導入による効率化

事例:次世代施設園芸宮崎県拠点「(有)ジェイエイファームみやざき中央」では、自走式防除機を導入することで、農薬散布作業の効率が8倍に向上しました。

大規模施設では、農薬散布作業に多くの時間と労力を要しますが、自走式防除機の導入により、大幅な効率化を実現しています。

宮崎県における大規模施設園芸対応型導入マニュアル(キュウリ、ピーマン)(農研機構)

適切な設備投資は、作業の効率化、省力化、人件費削減、生産性向上などに繋がり、収益改善に貢献します。

まとめ:植物工場で成功するための3つのポイント

10年以上植物工場の現場で働いてきた私の経験を踏まえ、収益改善を実現する具体的な事例を紹介してきました。

最後に、これらの事例から得られる、植物工場で成功するためのポイントを3つにまとめます。

  1. データに基づいた科学的なアプローチ:感覚だけに頼らず、データ分析に基づいて現状を把握し、改善策を検討しましょう。
  2. 人材の重要性を認識し、育成に力を入れる:従業員が働きやすい環境を作り、モチベーションを高めることで、定着率向上や生産性向上に繋げましょう。
  3. 適切な設備投資で、効率化・省力化を実現:初期費用は大きくなりますが、長期的な視点で投資効果を検討しましょう。

植物工場経営は、決して楽ではありません。
しかし、これらのポイントを踏まえ、常に改善を続けることで、収益向上を実現し、成功に近づけるはずです。

当サイトでは、植物工場の収益化をサポートするコンテンツを提供しています。

ご興味がある方は以下をご確認ください。

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