無料ツール
SimpleFert — 施肥設計ツール
養液栽培に特化した超シンプルな施肥設計ツール。Googleスプレッドシートで使えます。無料ダウンロード。
※Googleアカウントが必要です。ボタンを押すと、コピー確認のダイアログがGoogleのページで開きます。
使い始めるまで
SimpleFertは配布元のシートを直接編集できません。上の「Googleドライブにコピーする」ボタンから自分のマイドライブにコピーして使います。Googleアカウントがあれば、他の準備は不要です。
コピー後はいつも通りスプレッドシートとして編集できます。チーム共有や履歴管理もGoogleの標準機能でまかなえます。
なぜこのツールか
現場で施肥設計をしていると、既存のツールは多機能すぎて毎回迷うし、かといって自作のスプレッドシートは担当が代わった途端にメンテナンスが止まる。——そういう場面を何度も見てきました。
SimpleFertは、入力項目を5つに絞っています。元肥(養液更新)と追肥(濃縮原液)のどちらにも使えて、覚えることは最小限。次の担当者に引き継いでも、説明が数分で済む範囲にまとめています。
SimpleFertの使い方
シートをコピーしたら、まず「設計」タブを開いてください。画面左半分のグレーのセルだけが入力欄です。白いセルには計算式が入っているところがあります。シート自体を変更する時以外は触らないようにします。
入力は5項目だけです。
1. 配合量
養液更新などで元肥を作る場合と、追肥を作る場合で入力が違います。
- 元肥(養液更新など)の場合: 養液全体の総水量。養液タンクや養液ベッドをすべて含めた水量を入力します。
- 追肥で濃縮原液を作る場合: A液・B液を合わせた水量。A液200L・B液200Lを作るなら「400」Lと入力します。
2. EC設定値
栽培する際のEC設定値を入力します。
3. 参考処方
一般的に知られている処方と比較して、設計した養液の成分が多いか少ないかを確認できます。対象処方より成分が10%以上高い場合は「多」、低い場合は「少」、ほぼ同じなら「適」と表示されます。
特に比較が不要な場合は、参考処方欄は「なし」を選択してください。
4. 原水成分
使用する用水の成分をmg/Lで入力します。成分分析の業者に依頼するなどして、できるだけ正確な値を使うのがベターです。自治体の水質検査結果も参考にできます。
用水によっては特定の成分が多すぎるケースがあり、養液バランスに影響が出ることがあります。
入力する値は分析表の書き方によって「元素表示」「イオン表示」「酸化物表示」と単位が異なります。シートの表記に合わせた単位に換算して入力する必要があります。単位の違いがある場合は、後述の「単位変換シートの使い方」を参照してください。
5. 肥料の使用量
実際に使用する肥料の量をkgで入力します。入力すると右側に計算結果(成分量・比率・倍率)が表示されるので、それを見ながら肥料の使用量を調整していきます。
使用量を決める順番は、硝酸カルシウムから決めるとスムーズです。基本的には、複数の肥料から供給される成分は後回しにします。
例えばカルシウムは、他のカルシウム肥料を併用しない限り硝酸カルシウムからしか供給されません。このように供給源が1つに絞られている成分から決めていくと、後の調整が効きやすくなります。
硝酸カルシウムでカルシウム濃度を合わせたら、次に硝酸カリウムで窒素とカリウムを同時に補給し、最後にリン酸やマグネシウムなどを決めていきます。
修正幅は厳密でなくて構いません。前回の処方から「カルシウムを減らしたい」なら5〜10%減といったラフな決め方で十分です。
計算結果の見方
成分量の表示: 上段が成分量、下段が比率です。多量元素と微量元素では単位が異なります(mEq/Lとmg/L)。肥料の量を入力するとEC設定値に合わせた養液中の成分量が計算されます。厳密には目安値ですが、実務上は問題ない精度です。参考処方を選択している場合は「適」「多」「少」で比較結果も確認できます。
倍率の目安
「倍率の目安」は、使用した肥料で何倍の量の養液を作れるかを表します。EC設定値が低いほど多くの養液を作れるので、倍率は高くなります。
養液更新などで元肥を作る場合、倍率は1に近づきます。正確には、1に近づくように肥料の使用量を調整します。こうすることで「ECが高すぎた・低すぎた」といった養液作成時のトラブルを防げます。
追肥で濃縮原液を作る場合は、倍率が高い数値になります。(100倍とか200倍)
単位変換シートの使い方
水質分析の結果票には「元素表示」「イオン表示」「酸化物表示」など、複数の単位表記が存在します。SimpleFertの設計シートに合った単位に変換する必要があります。
「単位変換」シートを開き、手持ちの分析結果を左右どちらか合う方の欄に入力してください。右側に変換後の数値が表示されますので、それをそのまま設計シートの原水成分欄にコピーして使います。
肥料の種類・参考処方について
シートにはあらかじめ代表的な単肥肥料が入力されています。これだけでたいていの施肥設計には対応できます。
肥料の種類は追加することができます。単肥だけでなく配合肥料にも対応しています。ただし計算式が入っているため、編集に不安がある場合はそのまま使うのが無難です。
参考処方も同様に追加できます。自施設の処方がある場合は、処方名と数値を追加すればドロップダウンに表示されるようになります。
なぜ「肥料量は自動計算」ではなく「手入力」なのか
他の施肥設計ツールの多くは、成分量などを入力することで肥料の投入量を自動で算出する仕組みです。SimpleFertはあえてその逆で、肥料量を入力すると成分量が表示される設計にしています。
現場の施肥設計は、毎回ゼロから「正解」を計算するのではなく、前回の処方からの微調整の連続だからです。養液分析の結果を見て「カルシウムを減らそう」「硝酸カリウムを少し増やそう」と、前回のレシピを少しずつ動かしていくのが実務に近い感覚です。
自動計算ツールは「この数値が正解」という錯覚を生みやすく、本来大事な柔軟な調整の発想を妨げてしまいます。SimpleFertは「入力 → 結果を見る → 微調整」というループをそのままツール化したもので、現場で施肥設計を続けている人ほど自然に使えるはずです。
この考え方の背景は、拙著『植物工場の収益性を高める172のヒント』の第6章(肥料の扱い)で詳しく書いています。
さらに詳しく
施肥設計について詳しく学びたい方は、単肥肥料を使った養液の作り方と実践的なコツ もあわせてお読みください。
植物工場の収益性を高める172のヒント
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