現場管理技術
徒長の原因と対策:苗の姿から密度・光・夜温・湿度を読む
徒長が出たとき、多くの人がまず探すのは「どう止めるか」です。光を足すべきか、夜温を下げるべきか、湿度か。けれど止め方から入ると、たいてい手が止まります。原因の候補が、姿だけでは絞れないからです。
順番を変えてみます。止める前に、まず読む。間延びした軸は、苗が置かれた条件に反応して出している合図です。トレイにどれだけ詰めて播いたか、どのセルで育てたか、品種は何か——そして、葉が薄いか、節間だけが伸びているか、どの棚でいつ出るか。そこに、何が外れているかが書かれている。
この記事は、人工光型(閉鎖型のLED多段栽培)の葉物を前提に書いています。私が現場で見てきたのもこの範囲です。太陽光型のハウスや果菜は、光の入り方も蒸散の動き方も違うので、そのままは当てはまりません。徒長を「止める症状」ではなく「条件への合図」として読み直す。そして読む順番は、まず密度、それから環境です。そこから始めます。
徒長はまず密度を疑い、それから環境を読む
苗がひょろっと間延びして伸びる。いわゆる徒長です。出荷規格に乗らない、歩留まりに響く。それだけではありません。葉物では徒長で収穫物の重量が落ちることもありますし、細胞壁が薄くなって病害にも弱くなる。地味なようでいて、収量にも品質にも連鎖していく事象です。徒長が出ると、つい「さあどう止めようか」と環境のつまみを探したくなります。でもその前に、見る順番があります。
最初に疑うのは、環境ではありません。品種・播種密度・セル数です。同じ環境でも、伸びやすい品種は伸びます。トレイに詰めて播けば、隣と込み合うこと自体が後で述べる日陰回避を促します。育苗トレイのセル数(たとえば72穴・128穴・200穴)も、ただ「何本作れるか」ではなく「どんな姿の苗ができるか」を左右します。一つのセルが小さいほど根の張る余地が狭く、育苗期間が長い作物ほど不利に働く。私が現場で見てきた範囲でも、環境を悩む前に「そのトレイ、単純に播きすぎていないか/セルが小さすぎないか」で説明がつく徒長は少なくありませんでした。だからまず、品種・密度・セル数を整える。これが一段目です。
そのうえで、なお残る分が、環境のつまみ——光・夜温・湿度の3因子で読める範囲です。逆に言えば、密度や品種が真因のときに環境の3つをいくら回しても空振りします。「徒長=光・夜温・湿度の3つ」とだけ思っていると、いちばん効く一段目を飛ばしてしまう。だから順番は、密度が先、環境が後。徒長に効く要因はこの二段で尽きるわけでもなく、養分や培地、苗の作り方も関わってきますが、現場で動かせるレバーとしてはこの順で当たっていくのが実際的です。

徒長は止める症状ではなく環境への合図
密度と品種を整えたうえで、なお残る徒長を、ここからは環境の合図として読んでいきます。徒長は、止める対象というより、苗が環境の何かに反応して出している合図として見たほうが、ずっと捉えやすいものです。

育苗トレイで徒長に気づくとき、たいていは順番があります。トレイ全体を見て「なんか背が高いな」と感じるより先に、子葉と本葉のあいだの軸、胚軸が妙にスッと伸びて間延びしているのが目につく。育苗の初期は、まず葉より先に軸が伸びる。葉の大きさはそれほど変わっていないのに、軸だけが長い、という見え方です。しかも同じ棚でも上段と下段で出方が違ったり、出やすい時期があったりする。ランダムというより、何かパターンがありそうに見えてきます。
この「初期はまず胚軸が先に伸びる」というのが、ひとつの読みどころです。葉の面積はまだ確保されているのに軸だけが先行しているこの段階は、軸の長さを光環境への返事として読みやすい。上段と下段の違いも同じです。同じLEDでも棚位置で受け取る光の強さは変わるため、弱い側ほど伸びて返してくる。室の設定温度は一定でも、夜間にLEDを落としたあとの温度の下がり方や除湿の効き方が棚で差を持てば、それも軸に出ます。どの棚の苗が何に一番強く反応しているかが、軸を通して見えてくるわけです。
ただし、これは初期の見え方です。徒長が進んだり、光不足が主因だったりすると、見え方は変わります。後で触れるように、進行すると葉そのものが小さく薄く、色も淡くなってくる。「軸だけ長い」は初期のサイン、「葉まで薄く淡い」は進行・光不足側のサインと、段階で分けて見るのが実際的です。
軸が伸びるのは、苗が光を感じ取って起こす反応です。隣の葉に込み合って遮られると、赤い光に対して遠赤色光の比率が上がる。これをフィトクロムという光センサーが察知し、オーキシンなどのホルモンを介して茎を伸ばす。いわゆる日陰回避と呼ばれる反応として説明されます(参考: 1, 2)。光そのものが弱いときも軸は伸びやすくなりますが、「光が弱いほど一律に伸びる」と単純化はできません。青色光が強すぎても伸びることがあるなど、光の量と質の組み合わせで姿は一方向に決まらない。確かなのは、光の強さそのものが苗の育ちと姿を左右するということで、これは複数の研究が共通して示すところです(参考: 3, 4, 5, 6)。光の色(質)も姿に効きますが、こちらは赤と遠赤の比率や青色光受容体の働きとして整理されています(参考: 2)。

光不足か夜温かを苗の姿から見分ける
下段の苗が、上段より伸びている。栽培棚でまず思い当たるのは光の強さで、下段のほうが伸びやすいことがあります。一方で、夜間にLEDを落としても、下段は夜温を下げる空調の効きが甘く、暖かさがこもって夜温が下がりきらないことがある。この二つを前にして、光が弱いから伸びているのか、それとも夜の温度で伸びているのか、姿だけを見て見分けられるものだろうか、と迷った経験はないでしょうか。どちらも軸が伸びるという同じ結果になるなら、苗がどちらに反応しているのかは区別がつかないように思えます。

手がかりは、軸以外の見え方にあります。完全に切り分けられるわけではありませんが、当たりをつける目安にはなる。光が弱くて伸びている苗は、軸が長くなる代わりに葉が薄く、色も淡くなりがちです。光の方へ体を投げ出している姿といえます。一方、夜温が下がりきらず暖かさがこもって伸びる場合は、葉はそれなりに厚みや色を保ったまま、軸の節間だけが間延びすることがある。しかもこちらは、下段という場所と夜間という時間がそろったときに出やすい。つまり、姿そのものに加えて、いつ・どこで・葉はどうか、を合わせて見ると、どれが一番効いていそうかの見当がつきます。葉まで薄く淡ければ光寄り、葉は普通で節間だけ伸びていれば夜温寄り。そう仮説の優先順位をつけるイメージです。
ここで一つ、断っておきたいことがあります。この見分けは「主因を確定する道具」ではなく、「次に何から疑うか、優先順位をつける目安」です。複数の要因が同時にずれているときは、姿は教科書どおりには分かれません。とくに下段は、光も夜温も除湿も同時に甘くなりやすい場所で、いちばん使いたいところでいちばん割れます。だから割れたら一つに決めつけず、あとで触れるように保守側へまとめて寄せる判断になります。
湿度の出方と打ち手を動かす順序
湿度も見落とせません。人工光型では蒸散によって湿度が上がり続けるため常に除湿していますが、その除湿の効きが甘い時間帯や棚があると、それも軸の伸びに乗ってきます。光・夜温・湿度は別々に効くというより、絡み合って出ている。先に述べたとおり、これらは品種・密度・セル数を整えたうえで、なお残る分を読む環境の3因子です。

では、湿度はどう姿に出るのでしょうか。湿度は、軸そのものより葉の見え方と時間帯のムラに出やすいようです。除湿の効きが甘い時間や棚では蒸散が止まり、苗が水を動かさなくなる。すると葉は張りのあるまま、やや大ぶりでやわらかく茂り、その下で軸がゆるっと伸びてきます。光不足の「薄く淡い」とも、夜温の「節間だけ」とも違って、湿りがこもった棚・時間帯にまとまって出やすいのが目印です。湿度を単独で見るより、温度と組み合わせた飽差として捉えると整理しやすくなります。飽差が蒸散を左右することは、果菜や温室管理の研究で機構として整理されてきました(参考: 7, 8)。
ひとつ注意しておきます。これらの研究は温室トマトで「飽差を下げる(湿度を高める)と気孔が開いて光合成が進み、増収する」という、いわば良い方向を示したものです。ここで私が書いている「湿りがこもって蒸散が止まると、葉がやわらかいまま軸がゆるむ」という悪い方向は、出典がそのまま支えているわけではありません。前段の「湿度(飽差)が蒸散を左右する」という機構までが論文で、そこから先の「蒸散が止まる→軟弱に伸びる」という因果は、人工光型の葉物を見てきた現場の推定として書いています。型式も作物も違うので、機構を借りて当てて読んでいる、と受け取ってください。
ここで一つ、分けておきたいことがあります。いま伸びている一作をどうするかと、次の作で同じ徒長を出さないこと。これは別の話です。すでに伸びはじめた苗は時間との勝負で、原因を一つに絞り込んでから動くと、その間に伸びが進んでしまう。だから、いま出ている徒長に対しては、原因の特定を待たずに保守側へまとめて寄せる。つまり光を底上げし、夜温を下げ、除湿を強める。この動きが現実的です。ただし、急に大きく動かすとそれ自体がストレスになるので段階的に。そして、すでに光が足りている棚で更に光を上げるのは逆効果になりえます。光は多いほどよいわけではなく、ある先からは増やしても収量が伸びず、かえって落ちる帯もあるからです。底上げが要るのは弱い棚であって、足りている棚ではありません。
主因を一つに絞り込む読み方が生きるのは、むしろ次の作に向けてです。朝に上段と下段の苗を一度並べて見比べれば、棚ごとの差はその場で読めます。軸の長さ・葉色と厚み・葉のやわらかさを見て、どれが一番大きな声で返事しているかの見当をつける。そのうえで、次のロットで疑わしい一つを動かして出方の変化を見れば、主因を確かめられます。同じ一作の中で三つを同時にいじると、どれが効いたのかが分からなくなる。一つずつ確かめるのは、別のロットでこそ意味を持つのです。
もっとも、環境要素はそれぞれの最適値を別々に求めて足し合わせても、同時に動かしたときの結果を予測しきれません。変数同士が相互作用するため、最適値は文献や生育段階によってばらつきます。ある一つの要素についてさえ、これが唯一の最適値と言い切れる数字は揃っていません(参考: 9)。だからこそ、確かめは一度で終わらせず、作をまたいで少しずつ詰めていく。それが現実的なのです。
弱い棚の光を底上げする手当て
「光を底上げする」「弱い棚を底上げする」と書いてきましたが、では具体的にどう底上げするのか。やみくもに照明を増やすと電気代だけが膨らみます。「光を増やす=電気代増」という発想から、「光の質と配り方を効率よく直す」という側へ切り替えるのが、省エネと徒長防止を両立させる入口です。投資対効果の高い順に、いくつか挙げておきます。
一つ目は反射材です。施設内部や棚の反射率を高めると、同じ照明設備でも植物に届く光を増やせます。低コストの割に効きが大きく、棚の側面に反射シートを当てれば横方向からも光が入り、中・下段の光環境が改善します。私が現場で見てきた範囲でも、新しい照明を足す前に、まず反射でどこまで稼げるかを当たることが多かった。
二つ目は照明の高さと配り方です。LEDは間隔が空きすぎると照射範囲のあいだに弱い帯ができます。照明の間隔を空けすぎないよう照射を重ね、真上からだけでなく斜め・横からも届くようにすると、棚内の光むらが減って下段まで行き渡ります。徒長は「平均の光量」より「いちばん弱い場所」で出るので、むらを潰すこと自体が底上げになります。
そのうえで足りなければ、間欠照明で電力を抑えつつ光質を整える、補光設備を増やす、と段を上げていきます。順番としては、まず反射材・適正密度・照明高さの調整という低コスト側から始め、効果を見て必要なら補光へ。いきなり設備投資から入らないことです。
伸びた苗は段階で打ち手が変わる
すでにスッと伸びてしまった苗を、どう扱うか。ここが現実的には気になるところです。原因がわかって環境を直したとして、伸びた胚軸は締まって元に戻るのか。それとも一度伸びたらもう戻らず、出荷規格としては諦めるしかないのか。戻せるとしたら、どの段階までならまだ間に合うのか。
まず伸びてしまった胚軸そのものについては、私が現場で見てきた範囲では、締まって元の長さに戻ったことはありません。一度伸びた節間は縮まない。そこは期待しないほうがいいのです。ただ、戻る・戻らないで割り切るよりも、段階によって打ち手の意味が変わると見たほうが、現場では使いやすいと思います。伸びがまだ胚軸の初期で、本葉がこれから展開していく段階なら、環境を直す価値は十分にあります。この先の節間の伸びは止められますし、上に積み上がる本葉側で姿を立て直せる余地が残っているからです。伸びた分は残っても、規格に乗せ直せる見込みはある段階です。
一方、すでに節間が間延びして倒れ気味で、本葉も間延びを引き継いで展開し始めているなら、この株は規格として割り切る判断も出てきます。判断材料は本葉の段階だけではありません。生長点と根がまだ生きているか。生育のどのあたりにいるか。育苗の早い段階なら植え替えが効率的なこともありますし、収穫が間近なら、無理に立て直そうとせず徒長株のまま管理して収穫してしまうほうが得な場合もあります。線引きの芯は「本葉が間延びを引き継いだかどうか」に置きつつ、生長点・根の生死と作期の段階を合わせて、生育の後半まで判断を伸ばすイメージです。
伸びてしまった軸そのものが戻らないのは、形態が作られる時期に決まってしまうからです。似た例として、別の作物ではありますが、バラで葉(の気孔)の機能がその葉の発達期の環境で固定され、後から環境を変えても戻りにくい、という報告があります(参考: 10)。作物も器官も違いますが、形態が育つ時期に決まって後から戻しにくいという傾向は、徒長の節間にも当てはめて見られます。伸びてしまった軸そのものは締まりませんが、打ち手の価値は、この先の伸びを止める・次の作で出さない、という側に向くのです。
次の作で出さない播種前の確認点
伸びた軸が戻らないなら、打ち手の価値はやはり「次の作で出さない」側にあります。では播種の前に、何を確認しておくと事故が減るのか。一作の打ち手を「出してからの修正」で終わらせないために、ここからは出る前の備えに目を移します。
確認の順番も、これまでと同じです。まず密度、それから環境。
最初に、播種密度とセル数です。播種密度が高くて隣と込み合えば、それ自体が日陰回避を促します。狙う苗の姿と育苗期間に対して、トレイのセル数(72穴・128穴・200穴など)が小さすぎないか。育苗期間が長い作物ほど、一つのセルが大きいトレイ側に寄せると徒長リスクは下がります。群落が混みすぎて下の葉まで光が届かなくなってくると、徒長のリスクが上がります。隣の株と葉が重なり始めたり、下葉が黄化し始めたりしたら、間引きや移植のタイミングです。これらは育苗の組み立てとして、播種前に棚別で押さえておきたいところです。
そのうえで、環境の3つを播種前に確認します。
光は、棚位置ごとの光量を播種前に測っておくのが先決です。同じLEDでも下段は届きが落ちていることがあり、弱い棚は伸びで返してくる。下段が基準を割っていないか、棚ごとのばらつきを数値で押さえておきます。
夜温は、消灯後の温度の下がり方を棚別に見ておきます。室の設定温度は一定でも、下段は夜間に夜温を下げる空調の効きが甘く暖かさがこもりやすく、夜温が下がりきらないと軸だけ間延びさせる引き金になる。播種前に、消灯後の下段の温度推移を確認しておきます。
湿度は、除湿の効きが甘い時間帯や棚がないかを事前に拾っておきます。湿気がこもる時間・場所は、葉がやわらかいまま軸が伸びる返事を呼びやすいところです。
密度・セル数を整え、この三つは絡んで出るので一因子だけ直せば止まるとは見ない。播種前に、密度・セル数とあわせて「事故の起きやすい棚・時間」を棚別に書き出しておく。すると、徒長を出してから慌てるのではなく、出る前に弱い箇所を読んで備えられます。
徒長は、「出てから直す」ものではなく、「出る前に、どの棚が何で弱いかを読んでおく」ものです。伸びた軸を責めるのではなく、まず密度を疑い、それでも残る分を、苗がどの設定に返事しているかの合図として読む。そう思うと、毎朝トレイを見る目が、少し変わってくるはずです。
徒長は収量に直結します。密度・光・夜温・湿度をどう組み合わせて読むかは、そのまま植物工場の採算の話でもあります。現場で使える観点をもっと広く拾いたい方は、こちらもどうぞ。