【植物工場の収量アップ】光環境を最適化する方法を徹底解説!

こんにちは、今村です

植物工場で高品質な作物を安定生産し、収益を向上させるには、光環境の最適化が欠かせません。植物工場は、太陽光ではなく人工光を用いるため、光環境を自由にコントロールできる点が大きなメリットです。

しかし、光環境を適切に管理しなければ、逆に生育不良や収量低下を招いてしまう可能性も秘めています。

本記事では、植物工場における光環境管理の重要性について、基礎知識から実践的なテクニックまで詳しく解説していきます。

この記事を読むことで、以下のポイントが分かります。

  • 植物工場における光環境管理の重要性
  • 光合成を促進させる光の強さ、照射時間、光質の条件
  • 光のロスを減らし、効率的に作物に光を届ける方法
  • 光環境以外の生育障害要因と対策
  • 照明スケジュールと収穫タイミングの関係

これから植物工場を始めようと考えている方、あるいは既に運営していて収量アップを目指したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

なぜ光環境の管理が重要なのか?

植物は光合成によって生育に必要なエネルギーを作り出しています。光合成とは、光エネルギーを使って水と二酸化炭素から糖を合成する反応のことです。植物工場では、太陽光に代わって人工光源を利用するため、光環境を適切に制御することが、植物の生育にとって非常に重要になります。

光環境を適切に管理することで、以下のような効果が期待できます。

  • 光合成の促進による収量アップ
  • 生育の均一化による品質向上
  • 栽培期間の短縮による生産性向上
  • 電気代の削減によるコストダウン

逆に、光環境管理を怠ると、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 光合成不足による生育不良
  • 光過剰による生育障害(チップバーンなど)
  • 電気代の増加によるコスト増
  • 品質のばらつき

このように、光環境管理は植物工場にとって非常に重要な要素と言えるでしょう。

光合成を理解する

光合成は、以下の2つの段階を経て行われます。

  1. 光化学反応(明反応): 光エネルギーを利用して、水分子を分解し、酸素、ATP、NADPHを生成します。
  2. カルビンサイクル(暗反応): CO2を材料に、光化学反応で生成されたATPとNADPHを利用して糖を合成します。

光合成を左右する要因

  • 光強度: 光の強さ。強すぎる光は光阻害を引き起こす可能性があり、弱すぎる光は光合成速度を低下させます。
  • 照射時間: 光を当てる時間。長すぎるとエネルギーの無駄になり、短すぎると光合成不足に陥ります。
  • 光質: 光の色(波長)。植物の光合成に有効な波長は、主に赤色光と青色光ですが、緑色光や遠赤色光も重要な役割を担います。
  • CO2濃度: CO2は光合成の材料となるため、濃度が高いほど光合成速度は上がります。
  • 温度: 光合成酵素は、最適な温度域で最も効率的に働きます。
  • 湿度: 湿度が高すぎると、蒸散が阻害され、光合成速度が低下します。
  • : 水が不足すると、気孔が閉じてCO2の吸収が阻害されるだけでなく、光合成に必要な電子伝達系も阻害されます。

これらの要素を総合的に理解し、最適な環境を作り出すことが、植物工場での高品質・高収量を実現する鍵となります。

光環境を最適化する具体的な方法

ここからは、光環境を最適化するための具体的な方法について解説していきます。

1. 光の強さを調整する

光合成速度は、光の強さが増すほど速くなりますが、ある程度の強さに達すると頭打ちになります。これを光飽和点と呼びます。逆に、強すぎる光は光阻害を引き起こし、生育を阻害する可能性があります。

光阻害とは、強すぎる光によって光合成器官が損傷を受ける現象です。具体的には、葉緑体が損傷を受けたり、光合成酵素が活性酸素によって破壊されたりします。

光阻害を防ぐためには、光の強さを適切な範囲に保つことが重要です。

ポイント

  • 栽培する作物によって最適な光強度が異なります。
  • 生育ステージによっても最適な光強度が異なります。一般的に、生育初期は弱光、生育後期は強光を必要としますが、戦略的に生育初期から強光を用いるノウハウも存在します。

2. 照射時間を調整する

光合成量は、照射時間に比例して増加します。しかし、照射時間が長すぎても、光合成産物は飽和し、電気代の無駄になります。

一般的に、植物工場では12〜18時間の照射時間が一般的です。

ポイント

  • 作物や生育ステージによって最適な照射時間は異なります。
  • 電気料金の安い夜間に照射時間を長くするなどの工夫も有効です。
  • 長時間照射する場合には、連続光ではなく、暗期を設けることが重要です。暗期を設けることで、植物は光合成で得たエネルギーを使って成長や代謝を行うことができます。

3. 光質を調整する

植物の光合成に有効な波長は、主に赤色光(600〜700nm)と青色光(400〜500nm)です。

  • 赤色光: 光合成の効率が高く、茎の伸長や開花を促進します。
  • 青色光: 葉緑体の発達を促し、葉を厚くする効果があります。

LED照明は、これらの波長を自由に調整できるため、植物工場で広く利用されています。

ポイント

  • 赤色光と青色光の比率を調整することで、生育をコントロールすることができます。
  • 最近では、緑色光や遠赤色光の効果も注目されており、これらの波長を組み合わせることで、さらなる生育促進効果が期待されています。

4. 光の分布を均一化する

植物工場では、光源から遠い場所や、他の植物の影になる場所では、光量が不足する場合があります。

光の分布を均一化するためには、以下の方法が有効です。

  • 反射板を設置する: 反射板を設置することで、光源から直接当たらない場所にも光を届けることができます。
  • 照明器具の配置を工夫する: 照明器具を複数台設置する場合には、均一に光が当たるように配置を工夫する必要があります。

5. 光環境以外の環境要因を最適化する

光環境だけでなく、温度、湿度、CO2濃度、養液管理なども最適化する必要があります。

ポイント

  • 温度管理: 植物の生育に適した温度範囲は、種類によって異なります。適切な温度範囲内であれば、温度が高いほど光合成速度は高まりますが、同時に呼吸速度も高まるため注意が必要です。
  • 湿度管理: 湿度が高すぎると、病害発生のリスクが高まるため、適切な湿度管理が必要です。
  • CO2濃度管理: CO2濃度を高めることで、光合成速度を高めることができます。植物工場では、CO2発生装置を設置したり、CO2ボンベを利用したりする方法が一般的です。
  • 養液管理: 養液中の栄養濃度が適切でないと、生育不良を引き起こす可能性があります。ECセンサーやpHセンサーなどを用いて、養液の状態を常にモニタリングすることが重要です。

ただし実際のところ、この記事のような知識を知っているだけでは現場力は上がりません。

特に、植物工場の収益性を高めるために大切なことは、「これらの知識を持ったうえで、具体的にどう改善するか」です。

当サイトでは、以下のように「収益性に特化したノウハウ」も提供しています。

CO2濃度と光合成速度の関係を知る

光合成速度は、光とCO2の両方に依存します。

カルビンサイクルでは、CO2から糖を合成するため、CO2は光合成の原料として不可欠です。そのため、光が十分でも、CO2が不足していれば光合成速度は上がりません。

植物工場では、高い密閉性のために、CO2施用をしなければ、栽培室内のCO2はそのうち無くなってしまいます。

そしてCO2濃度を高めることで、作物の光合成速度を上げることもできます。一般的に、大気中のCO2濃度は400ppm程度ですが、植物工場では1,000〜1,500ppm程度に維持することが望ましいとされています。

強光による光阻害と光呼吸のメカニズムを理解する

光が強すぎると、光阻害や光呼吸が起こり、逆に生育が阻害されます。

光阻害は、強光によって活性酸素が発生し、光合成器官が損傷を受ける現象です。活性酸素は、酸素分子が光のエネルギーを受けて励起された状態のことで、非常に反応性が高く、生体内の様々な物質を酸化して損傷を与えます。

一方、光呼吸は、強光下で光合成産物が無駄に消費されてしまう現象で、光合成効率が低下します。光呼吸では、本来CO2と結合すべきRuBPという物質が、酸素と結合してしまうために起こります。

これらのメカニズムを理解することで、適切な光量管理の必要性が分かります。

まとめ

植物工場における光環境管理の重要性と、最適化のための具体的な方法について解説しました。

光環境は、植物の生育に大きな影響を与えるため、適切に管理することが重要です。

本記事で紹介したポイントを踏まえ、光環境を最適化することで、高品質な作物を安定生産し、収益向上を目指しましょう。

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植物が人工の光で育つ理由は何ですか?

植物の光合成に必要なのは、光の波長と強度であり、光の由来は問いません。太陽光には、光合成に最適な赤色光と青色光が含まれていますが、LEDなどの人工光源でも、これらの波長の光を再現することができます。つまり、植物にとって重要なのは、光が太陽からのものか、人工的なものかではなく、光合成に適した波長と強度の光が供給されることなのです。そのため、植物工場では、LEDを使って太陽光と同等の光環境を作り出すことで、植物を育てることができるのです。

植物工場はなぜ赤字なのでしょうか?

植物工場が赤字になる理由の一つに、照明にかかる電気代の高さがあります。植物の光合成に必要な光を人工光源で賄うため、多くの電力を消費します。また、1日当たりの光照射時間が長いほど、電気代もかさみます。光環境の最適化を追求するあまり、過剰な設備投資や運営コストがかかると、収益性が悪化する恐れがあります。光の質や量は植物の成長に不可欠ですが、コストとのバランスを考えた適切な光環境の設計が求められます。

人工光型植物工場の特徴は?

人工光型植物工場の最大の特徴は、周年・計画生産が可能なことです。太陽光に依存せず、最適な光環境を人工的に制御できるため、季節や天候に左右されない安定した生産が可能となります。また、閉鎖環境で栽培するため、病害虫の侵入を防ぎ、農薬の使用を最小限に抑えられます。さらに、立体的な栽培が可能なので、限られた面積で効率的に生産できるというメリットもあります。

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