PDF / 394ページ / 約90万文字以上 / 19章 / 172トピックス
植物工場の現場運営について、体系的にまとめた実践的な情報はほとんどありません。学術書は理論に偏り、メーカーの資料は設備の話が中心。「現場をどう回すか」を教えてくれる資料が、出版・情報提供の面でこの業界には存在しませんでした。
本書は、その空白を埋めるために書かれた実践ガイドです。栽培環境、生産計画、人材管理、衛生、作業工程——植物工場の現場で起きることを、19章・172トピックスで幅広く、かつ具体的に扱っています。
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CO2濃度を上げれば収量が増える。しかし同時に温度・湿度・光を考慮しなければ、生育障害が起きてむしろ収量が減る。 こういった「現場の肌感覚」は、教科書には載っていません。
しかも、収益性は栽培環境だけでは決まりません。
栽培・人・作業・計画——すべてが噛み合って初めて、収益は最大化します。
本書は、この「全体最適」を実現するための実践的なヒント集です。 172のトピックスは、現場経験をベースにした実践的な知識で構成されています。
読み進めるうちに、「あ、だからうまくいかなかったのか」と思う瞬間が出てきます。正しいと思ってやっていたことが実は逆効果だったり、見落としていた小さなことが収益に大きく影響していたり。読者自身の現場を見る目が変わっていく——そういう本です。
Shohei Imamura
2011年から植物工場業界に携わり、大小合わせて10箇所以上の植物工場の立ち上げ支援および運営管理に関与。 日本トップクラスの生産規模を持つ工場の立ち上げ経験も含む。延べ600名以上のスタッフ教育に従事。
株式会社ファームシップでは、パートナー工場の立ち上げ・再生支援チームのマネージャーとして、 各現場に住み込みで常駐し続けた。その経験から確信したのは「植物工場の収益を左右するのは、 最新鋭のシステムではなく、それを運用する人の力」ということ。 理論上は正しくても現場ではうまくいかないこと、逆に現場でしかわからない小さな工夫が大きな差を生むこと——そういった経験を、この本に詰め込んでいます。
以下は、著者が現場支援やコンサルティングの場でよく聞かれる質問と、それに対する本書の考え方の一部です。
現場運営の観点でいえば、大きな原因の一つは、栽培環境・生産計画・人材管理・作業工程のどこか一つだけを改善しようとする「部分最適」に留まっていることです。たとえばCO2濃度を上げて収量を増やしても、温度や湿度を同時に調整しなければ生育障害が起き、かえって収量が下がります。収益性は、現場のあらゆる要素が噛み合って初めて改善します。本書では、現場をどう変えれば収益が改善するのか、その考え方と具体的な方法を172のトピックスで体系的に解説しています。
植物工場のコスト構造で大きな割合を占めるのは、電力費と人件費です。ただし、これらは単純に削れば収量や品質に直結します。重要なのは、日々の栽培管理や作業工程の中で「何を削って何を維持するか」を判断できる現場力です。本書では、全体を通して、現場の回し方や考え方を変えることで収益を改善する方法を解説しています。
172のトピックスでは、こうした問いに対して、栽培環境・生育障害・作業工程といった現場の実務レベルで、一つひとつ細かく具体的に踏み込んでいます。
本サイトには「チップバーン」に関する検索で訪れる方が多く、現場で悩んでいる方が多いテーマです。本書でもチップバーンについて複数のトピックスで解説していますが、以下にそのうちの1つを掲載します。
本書より
チップバーン対策として、真っ先に思いつくのは「養液のカルシウム濃度を上げる」ことかもしれません。私がこれまで接してきた生産者さんの中にも、「養液のカルシウムを増やせばチップバーンが解決する」と安易に考えている方もいらっしゃいました。
しかし私は長年、様々な植物工場の現場を見てきましたが、養液中のカルシウム濃度を高めても、チップバーンが劇的に改善したケースはほとんどありませんでした。なぜなら、チップバーン発生の本質は、植物体内のカルシウム不足ではなく、必要な場所に必要な量のカルシウムが供給されないことにあるからです。
植物は、根から吸収した水分を、蒸散によって葉の気孔から水蒸気として放出しています。カルシウムは、この蒸散の流れに乗って、植物全体に行き渡ります。つまり、蒸散が活発な葉ほど、多くのカルシウムを獲得できるというわけです。
しかし、植物工場で栽培されるレタスのような葉菜類では、外葉に比べて内葉は蒸散量が少なく、カルシウムの供給が不足しがちです。さらに、成長が早く、細胞壁が未発達な新葉ほど、チップバーンが発生しやすいため、内葉の新葉は、常にカルシウム不足のリスクと隣り合わせです。
養液のカルシウム濃度を高めても、そのカルシウムは、蒸散量の多い外葉に優先的に供給されます。結果として、チップバーンが発生しやすい内葉へのカルシウム供給量は、ほとんど改善されないのです。
養液からのカルシウム吸収は、アンモニア、カリウム、マグネシウムとの拮抗作用の影響を受けます。これらの成分が多いと、カルシウムの吸収が阻害され、結果的にチップバーンが悪化する可能性があります。
ただし、この拮抗作用も、内葉へのカルシウム供給不足という問題の前では、ほとんど意味を成しません。なぜなら、植物が吸収できるカルシウムが極端に少ない状況でない限り、内葉に十分な量のカルシウムが供給されれば、チップバーンは発生しないからです。
チップバーン対策の本質は、植物体内のカルシウム量を増やすことではなく、必要な場所に必要な量のカルシウムを届けることにあります。
そのためには、チップバーンが多発する内葉の蒸散を促進することが重要となります。内葉の蒸散が活発になれば、カルシウムの供給量も増え、チップバーンの発生を抑制できる可能性が高まります。
しかし、ここで大きな壁にぶつかります。養液のカルシウム濃度を高めることは比較的容易ですが、数万株もの植物の内葉に、ピンポイントで風を送り込み、蒸散を促進させることは、現実的に非常に困難です。
では、どうすれば良いのでしょうか?
その答えは、株間の通気性を改善したり、湿度を適切に管理したりするなど、栽培環境全体を総合的に最適化することにあります。
部分的な対策ではなく、植物生理学、環境制御、データ分析などを統合的に理解し、工場全体の生産性を最大化しながら、チップバーンを抑制していく。この「攻めては守る」戦略こそが、植物工場で収益を上げていくための重要な考え方なのです。
この攻めては守る戦略について、より詳しく解説していきます。
これは、本書の172トピックスのうちの1つです。
「チップバーンにはカルシウムを増やせばいい」
——ネットや書籍には、そう書いてあります。
しかし、前掲のトピック90で解説したように、それだけでは現場のチップバーンは解決しません。
チップバーンのメカニズム自体は、書籍や論文でも学べます。しかし、それを現場で実際にやろうとしたときに何が起きるかは、どこにも書かれていません。理論上は正しくても、数万株の内葉にピンポイントで風を当てることは現実的に困難です。
本書は、そういう「できること」と「できないこと」の線引きを、現場経験から正直に書いています。
本書が扱っているのは、こういうことです:
調べて、学んで、試した。それでも結果が出ない。
足りなかったのは知識ではなく
現場目線の実践知。
現場で誤解されやすいことを指摘し、現場を良くするために重要な考え方を示す——知っているかどうかで日々の判断が変わる、そういう「ヒント」を172トピックス収録しています。
19章 · 172トピックス · 394ページ
見るべき場所が項目別に分かれているので、困ったときに見ると便利です。 「自分の考えは正しいかな…?」という確認になるし、読むと「あ、これ忘れてたな」と思い出すこともできます。 この本が現場の成果に繋がることは実感できました。
常に現場目線で書かれているので、何を考えるべきかが一発でわかります。 栽培についての他の本は正直よくわからなくて読む気にならなかったのですが、これは違いました。 読んでいると「あ、だからうまくいかなかったのか」と腑に落ちる瞬間があって、自分の現場を見る目が変わりました。
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172のヒントは、現場経験をベースにした実践的な知識で構成されています。
知っているかどうかで、現場力が変わります。