【植物工場の入門知識】収量を左右する病気・生育障害の原因と対策を徹底解説!

こんにちは、今村です

植物工場で働く上で、避けては通れないのが病気や生育障害への対策です。生育環境を人工的に制御する植物工場では、従来の露地栽培とは異なる問題が発生します。

収量と品質を安定させるためには、それぞれの病気や生育障害の特徴を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

特に、植物工場事業者や従業員、キャリアの浅い方、転職を考えている方にとって、これらの知識は現場で必ず役立ちます。

今回は、植物工場で発生しやすい代表的な病気と生育障害について、その原因やメカニズム、具体的な対策をわかりやすく解説していきます。

目次

植物工場で発生しやすい病気・生育障害とは?

植物工場は、光・温度・湿度・CO2濃度などを人工的に制御することで、植物の生育をコントロールする施設です。
生育に適した環境を人工的に作り出すことで、露地栽培と比べて、短期間での収穫、高品質な作物の生産、安定供給などが可能になります。

しかし、生育環境を制御するということは、逆に言えば、少しの環境変化が植物に大きな影響を与えてしまうということでもあります。
植物工場で発生しやすい病気や生育障害には、以下のようなものがあります。

  • チップバーン
  • 葉焼け
  • 徒長
  • 根のダメージ
  • 連作障害

これらの病気や生育障害は、植物の生育段階や種類、栽培環境などによって、その発生原因や対策が異なります。
そのため、それぞれの症状と原因を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要になります。

チップバーン:葉の先端が枯れる生理障害

チップバーンは、レタスやハーブなどの葉の先端や縁が褐色に枯れてしまう生理障害です。
植物工場で発生する代表的な生育障害の一つであり、発生すると商品価値が大きく損なわれてしまいます。

チップバーンの原因

チップバーンの主な原因は、植物体内におけるカルシウムの不足です。
植物は、細胞と細胞を繋ぐ細胞壁を形成する際にカルシウムを必要としますが、カルシウムは植物体内を移動しにくい性質を持っています。
そのため、葉の先端や縁などの、蒸散が盛んな部分ではカルシウムが不足しやすく、チップバーンが発生しやすくなります。

また、以下の要因もチップバーンの発生に関与していると考えられています。

  • 高速栽培による細胞の急激な成長: 植物工場で行われる高速栽培では、植物の成長が早いため、細胞壁の形成が追いつかなくなり、カルシウム不足に陥りやすくなります。
  • 高湿度環境: 湿度が高いと植物の蒸散が抑制され、カルシウムの吸収が阻害されます。
  • カリウム過剰: カリウムは植物の生育に必須の栄養素ですが、過剰に吸収されるとカルシウムの吸収を阻害する可能性があります。
  • 根のダメージ: 根が傷んでいると、水分や養分の吸収能力が低下し、カルシウム不足を引き起こします。

チップバーンが少ない植物工場で行われている対策

多くの植物工場ではチップバーンに悩まされていて、様々な対策が打たれています。

養液の見直し、風当て、温度や湿度など。しかし、これらの対策をしてもチップバーンが無くならないケースは多いです。

なぜでしょうか。

それは、チップバーンの1つの側面しか見ずに対策しているからでしょう。チップバーンが起こる要因は複雑です。

カルシウム不足だからといって、カルシウム供給を増やしてもチップバーンは無くなりません。

チップバーンが少ない植物工場では、チップバーンを本質的に理解し、効果的な対策を打っています。そのような実践的なノウハウは、当サイトのコンテンツでも提供しています。

興味があれば、以下をご確認ください。

葉焼け:葉が変色・枯死する障害

葉焼けは、強すぎる光や熱によって、葉緑素が破壊され、葉が変色したり枯れたりする障害です。

植物工場では、太陽光に比べて強い光を照射するケースが多いため、葉焼けが発生しやすくなります。

葉焼けの原因

葉焼けの主な原因は以下の点が挙げられます。

  • 照明器具との距離が近すぎる: 特に、植物に近接して設置するタイプのLED照明の場合、葉焼けのリスクが高まります。
  • 照明の照射時間が長すぎる: 光合成に必要な時間以上に光を照射し続けると、葉に負担がかかり、葉焼けが発生しやすくなります。

葉焼けの対策

葉焼けを防ぐためには、以下の対策を心がけましょう。

  • 照明器具との距離を適切に保つ: 照明の種類や出力、植物の生育段階に合わせて、適切な距離を保ちましょう。
  • 照明の照射時間を調整する: 植物の種類や生育ステージに合わせて、適切な照射時間と休眠時間を設定しましょう。

徒長:光を求めてひょろ長く伸びる現象

徒長とは、光が不足する環境で、植物が光を求めてひょろ長く間延びして育ってしまう現象です。
徒長した植物は、茎が細く軟弱になり、倒れやすくなってしまうため、植物工場では注意が必要です。

徒長の原因

徒長の主な原因は、光合成に必要な光量が不足していることです。
植物は、光合成によってエネルギーを得ていますが、光量が不足すると、より多くの光を求めて茎を伸ばそうとします。
その結果、茎だけが異常に長く伸びてしまい、徒長が発生します。

特に、以下の要因が重なると、徒長が発生しやすくなるため注意が必要です。

  • 光量不足: 植物工場の照明計画が不適切、または照明が故障している場合などに発生します。
  • 密植: 植物同士の間隔が狭すぎると、光が当たらずに徒長しやすくなります。
  • 高湿度: 湿度が高いと、植物は蒸散が難しくなり、体内の水分量が増えます。その結果、徒長しやすくなります。
  • 高温: 気温が高いと、植物の代謝が活発になり、徒長しやすくなります。
  • 窒素過多: 窒素は植物の生育に必須の栄養素ですが、過剰に与えると徒長しやすくなることが知られています。

根のダメージ:生育不良や枯死の原因に

根は、植物の生育に欠かせない水分や養分を吸収する役割を担っています。
この根がダメージを受けると、生育不良を引き起こしたり、最悪の場合枯死したりする可能性があります。

根のダメージの原因

根のダメージは、様々な要因によって引き起こされますが、植物工場では以下の点が主な原因として挙げられます。

  • 酸素不足: 根は呼吸をしてエネルギーを得ていますが、水耕栽培では、養液中の酸素濃度が低下しやすく、根が酸素不足に陥る可能性があります。
  • 水温の急激な変化: 水温が急激に変化すると、根にストレスがかかり、ダメージを受けやすくなります。
  • 養液濃度が適切でない: 養液濃度が適切でないと、根が養分を吸収できなくなったり、逆に水分が奪われたりしてしまいます。
  • 病害: 根腐病などの病気が発生すると、根がダメージを受けます。

根のダメージの対策

根のダメージを防ぐためには、以下の対策を心がけましょう。

  • 適切な酸素供給: 水耕栽培では、エアポンプやエアーストーンなどを設置し、養液中に十分な酸素を供給することが重要です。
  • 水温を適切に管理する: 水温が急激に変化しないよう、適切な温度管理を行いましょう。特に、夏場は水温が上がりやすいため、注意が必要です。
  • 養液濃度を適切に管理する: ECメーターなどを使い、植物の種類や生育ステージに合わせて、養液濃度を適切に管理しましょう。
  • 衛生管理を徹底する: 根腐病などの病気を防ぐため、栽培装置や器具の衛生管理を徹底しましょう。

連作障害:水耕栽培でも発生する?

連作障害とは、同じ場所で同じ作物を繰り返し栽培することで、生育が悪くなったり、病気が発生しやすくなったりする現象です。
一般的に、水耕栽培では土壌病害のリスクが低いため、連作障害は起こりにくいとされています。

しかし、水耕栽培でも、以下の様な原因で連作障害が発生する可能性はあります。

  • 養液中の成分バランスの乱れ: 植物が養分を吸収することで、養液中の成分バランスが徐々に崩れていきます。長期間同じ養液を使い続けると、特定の成分が不足したり過剰になったりし、生育不良を引き起こす可能性があります。
  • 自家中毒物質の蓄積: 植物は、根から様々な物質を分泌しますが、その中には、自身の生育を阻害する物質(自家中毒物質)も含まれます。養液を長期間交換しないと、これらの物質が養液中に蓄積し、生育障害を引き起こす可能性があります。

水耕栽培における連作障害の対策

水耕栽培で連作障害を防ぐには、以下の対策が有効です。

  • 養液の定期的な交換: 養液中の成分バランスの乱れや自家中毒物質の蓄積を防ぐためには、定期的に新しい養液に交換することが重要です。交換頻度は、栽培する作物や栽培規模、季節などによって異なりますが、一般的には1〜3ヶ月に1回程度が目安となります。
  • 栽培品種の混植: 連作障害が発生しにくい品種や、異なる品種や栽培ステージの違う作物を混植することで、連作障害のリスクを低減することができます。

まとめ|植物工場で成功するには、日々の観察と適切な対策が重要

今回は、植物工場で発生しやすい代表的な病気や生育障害について解説しました。

これらの病気や生育障害は、早期発見と適切な対策を講じることで、収量や品質への影響を最小限に抑えることができます。

植物工場で働く際には、日頃から植物をよく観察し、異常を発見したら迅速に対応することが重要です。

本記事を参考にして、病気や生育障害の知識を深め、適切な対策を講じることで、高品質な作物を安定的に生産できるようになりましょう。

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植物工場の欠点は何ですか?

植物工場は多くのメリットがある一方で、いくつかの欠点も存在します。

  • 初期費用が高い: 施設の建設費や設備投資に多額の費用がかかります。
  • ランニングコスト: 電気代や空調費用など、運営にもコストがかかります。
  • 栽培可能な品目が限られる: 葉物野菜など、比較的小型の作物が中心となります。
  • 技術や知識が必要: 生育環境の制御や病気対策など、専門的な知識が必要です。
  • 環境負荷: 電力消費によるCO2排出量など、環境負荷への配慮が必要です。

これらの欠点を踏まえ、メリットとデメリットを比較検討することが重要です。

植物はなぜ病気になるのですか?

植物は、様々な原因で病気にかかります。

  • 病原体の感染: 細菌やウイルス、カビなどの病原体が植物に侵入することで病気を引き起こします。
  • 環境ストレス: 高温や低温、乾燥、過湿などの環境ストレスによって植物が弱り、病気にかかりやすくなります。
  • 栄養不足: 植物に必要な栄養素が不足すると、生育が阻害され、病気に対する抵抗力が弱まります。
  • 遺伝的な要因: 特定の病気に弱い遺伝子を持つ植物は、病気にかかりやすくなります。

植物工場では、これらの原因を特定し、適切な対策を講じることで、病気の発生を予防することが重要です。

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