植物工場の生命線!養液管理で収量・品質アップ!【基礎から実践まで徹底解説】

こんにちは、今村です

植物工場で高品質な作物を安定供給するには、養液管理が欠かせません。

養液は植物にとって、まさに「食べ物」と「飲み物」を兼ねた重要な要素。

この記事では、植物工場における養液管理の基礎から実践的なテクニックまで、特に重要なEC・pH管理を中心に詳しく解説していきます。

目次

養液管理の基礎知識

養液管理とは、植物に最適な栄養と環境を提供するために、養液の状態を適切に保つことを指します。土耕栽培とは異なり、養液栽培では、植物が必要とする養分を水に溶かして供給します。そのため、養液の成分や状態が作物の生育に直結するのです。

養液管理の主な要素は以下の通りです。

  • EC(電気伝導率)管理: 養液中の肥料濃度を適切に保ちます。
  • pH(水素イオン濃度)管理: 養液の酸性・アルカリ性のバランスを整えます。
  • 温度管理: 植物の生育に適した水温を維持します。
  • 溶存酸素濃度管理: 根の呼吸に必要な酸素を供給します。
  • 衛生管理: 病原菌の増殖を抑え、清潔な状態を保ちます。

これらの要素を総合的に管理することで、健全な生育と高品質な収穫物を目指します。

EC管理:植物の水分吸収をコントロールする

ECとは、養液に電流がどれだけ流れやすいかを表す指標で、肥料濃度の目安となります。

ECと肥料濃度の関係

ECが高い=肥料濃度が高い、となりますが、完全に比例するわけではありません。

ECはあくまでも目安であり、用水にもともと含まれる肥料成分以外の物質にも影響を受けます。

ECコントロールの目的

ECを調整することで、根の水分吸収をコントロールすることができます。

  • ECが高い場合: 根の周りの養液の浸透圧が高くなり、根は水を吸収しにくくなります。
  • ECが低い場合: 根の周りの養液の浸透圧が低くなり、根は水を吸収しやすくなります。

適切なECレベルは、作物の種類、生育ステージ、環境条件(気温、湿度、光量など)によって変化します。

pH管理:養分吸収を左右する重要な要素

pHは、養液の酸性・アルカリ性の度合いを示す指標で、養分が植物に吸収されるかどうかに大きく影響します。

pHと養分吸収の関係

植物が養分を効率良く吸収するためには、養液のpHが適切な範囲内に維持されている必要があります。

  • pHが適切な範囲: ほとんどの必須養分が水に溶けやすい状態となり、根からの吸収がスムーズに行われます。
  • pHが極端に低い・高い: 鉄やマンガンなどの微量要素が溶けにくくなったり、リン酸がカルシウムと結合して吸収されにくい形態に変化したりするなど、養分吸収のバランスが崩れ、生育不良を引き起こす可能性があります。

特に鉄、マンガン、亜鉛、銅などの微量要素は、弱酸性条件下で溶解度が高まります。これらの要素は、植物の生育に欠かせない役割を果たしています。

  • 鉄: 葉緑素の合成に不可欠
  • マンガン: 光合成における酸素発生系の機能

これらの微量要素が不足すると、植物は正常な生育を維持できなくなるため、pH管理は非常に重要です。

pHが変化する原因

一般的に、養液栽培ではpH 5.5~6.5の弱酸性を維持することが推奨されています。この範囲であれば、ほとんどの必須養分が安定して吸収され、植物の生育に最適な環境を提供できます。

しかし養液栽培では、時間の経過とともに養液のpHが変化します。主な原因は以下の2つです。

  • イオン交換: 植物が根から養分を吸収する際に、水素イオン(H+)または水酸化イオン(OH-)を放出します。
    • アンモニア態窒素を吸収する際は水素イオンを放出するためpHが低下
    • 硝酸態窒素を吸収する際は水酸化物イオンを放出するためpHが上昇
  • 肥料成分の影響: 肥料の種類や配合比率によって、養液のpHが影響を受けます。
    • アンモニア態窒素主体だとpHが低下しやすく、硝酸態窒素主体だとpHが上昇しやすい

pH管理のポイント

  • こまめなpHチェック: 少なくとも1日に1回はpHを測定し、変化の傾向を把握しましょう。
  • 急激なpH変化を避ける: pH調整剤を使用する場合は、少しずつ添加し、pHの変化を緩やかにしましょう。
  • 記録を徹底する: pHの測定値や調整剤の使用量などを記録し、pHの変化パターンを把握しましょう。

作物の生産量を増やすための養液管理

ECやpHの概要を解説しました。

ただ、いちばん重要なことは、どういう設定で養液管理をすると、作物の生産量が増えるか。ですよね。

ECやpHはもちろん、様々なポイントで作物の生育に影響を与えるノウハウが存在し、成果をあげている植物工場では、そのようなノウハウを使っています。

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養液更新の重要性と方法

養液更新は、植物工場における重要な管理作業の一つです。長期間同じ養液を使い続けると、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 養分の偏り: 植物が養分を吸収するため、養液中の養分バランスが崩れ、特定の養分が不足したり過剰になったりする可能性があります。
  • 微生物の増殖: 養液中に微生物が繁殖し、根の生育を阻害したり、病気を引き起こしたりする可能性があります。
  • 塩類濃度の増加: 肥料の溶け残りや、植物の根から分泌される物質が蓄積することで、養液中の塩類濃度が上昇し、根への負担が大きくなる可能性があります。

養液更新は、これらの問題を解決し、植物に常に最適な養液環境を提供するために必要不可欠です。

養液更新のサイクル

養液更新のサイクルは、以下の要素を考慮して決定します。

  • 栽培期間: 長期栽培になるほど、養液の劣化が進みやすいため、更新頻度を高める必要があります。
  • 養液の状態: EC、pH、微生物量などを定期的に測定し、養液の状態を把握することで、更新のタイミングを判断します。

一般的には、2~3ヶ月に1回程度の頻度で全量更新を行うことが推奨されています。

養液管理のその他の重要なトピック

水耕設備に必要な機能

水耕栽培システムには、EC・pH管理に加えて、以下の機能があると、より効率的かつ安定した栽培が可能になります。

  • 自動水量調整装置: 蒸散によって減少した養液を自動で補充する機能。養液濃度を一定に保ち、人手不足の解消にも役立ちます。
  • 養液の遮光: 養液タンクや配管を遮光することで、藻の発生を抑制します。
  • 溶存酸素濃度の維持: 根の呼吸に必要な酸素を供給するため、曝気装置やバブリングシステムがあると効果的です。
  • 洗浄しやすいタンク設計: 定期的な清掃を容易にするため、排水口の位置や形状に工夫があると便利です。

ベッドやタンクに溜まるゴミの問題への対策

養液栽培では、根や葉の切れ端、藻などがゴミとなり、栽培ベッドや養液タンクに溜まることがあります。ゴミは病原菌の繁殖や養液の劣化を招くため、適切な対策が必要です。

  • フィルターの設置: 養液の循環経路にフィルターを設置することで、ゴミを物理的に除去できます。フィルターの目詰まりを防ぐため、定期的な清掃が必要です。
  • 養液の定期的な更新: 古い養液を新しい養液と全量交換することで、ゴミや病原菌を一掃できます。更新頻度は、作物の種類や栽培期間、養液の状態などを考慮して決定します。
  • 定期的な清掃:
    • 栽培ベッド:収穫時など、栽培パネルを減らすタイミングで掃除をしておきましょう。
    • 養液タンク:養液更新のタイミングで掃除するのが効率的です。

溶存酸素の重要性

植物の根も呼吸を行い、酸素を必要とします。特に、養液栽培では根が水中に常に浸っているため、土壌栽培に比べて酸素不足のリスクが高まります。

溶存酸素が不足すると、根の呼吸が阻害され、養分や水の吸収能力が低下し、生育不良を引き起こす可能性があります。最悪の場合、根腐れを起こし、枯れてしまうこともあります。

溶存酸素濃度を維持する方法

溶存酸素濃度を維持するために、以下の方法があります。

  • エアレーション(曝気): 空気ポンプを使って、養液中に細かい泡を送り込み、酸素を溶け込ませる方法です。
  • ウォーターフォール: 循環する養液を落差を利用して落下させることで、空気に触れさせ、酸素を溶け込ませる方法です。
  • バブリング: 養液タンクの底に設置した散気管から空気を送り込み、泡を発生させることで、酸素を溶け込ませる方法です。

これらの方法を組み合わせることで、より効果的に溶存酸素濃度を維持することができます。

まとめ

養液管理は、植物工場における最重要項目の一つです。EC・pH管理、溶存酸素、衛生管理など、様々な要素が複雑に関係しており、それぞれの項目を適切に管理することで、高品質な作物を安定して生産できるようになります。

本記事では、植物工場における養液管理の基礎知識から、具体的な管理方法、注意点までを詳しく解説しました。これらの情報を参考に、植物工場での収量・品質向上を目指しましょう!

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養液栽培の欠点は何ですか?

養液栽培は、土耕栽培に比べて、設備投資費用がかかることや、停電時などシステムトラブルの影響を受けやすいことが欠点として挙げられます。また、水耕栽培の技術や知識が不足していると、生育不良や病気のリスクが高まる可能性もあります。

養液の作り方は?

養液は、水に肥料を溶かして作ります。使用する肥料は、配合肥料と単肥があります。

養液を作る手順は以下の通りです。

  1. 水をタンクに貯めます。水道水を使用する場合は、残留塩素を除去する必要があります。
  2. 肥料を少しずつ水に溶かしていきます。肥料の溶解量は、ECメーターで確認しながら調整します。
  3. pHメーターでpHを測定し、必要であればpH調整剤で調整します。
養液栽培におけるmeとは?

養液栽培における”me”は、”milliequivalent”の略で、ミリ当量と訳されます。ミリ当量は、イオンの量を表す単位の一つで、肥料の成分量を表す際に用いられます。

ミリ当量を用いることで、異なる種類の肥料を比較したり、養液中のイオンバランスを把握したりすることができます。

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