植物工場のリスクを、ずっと現場にいた私が暴露

こんにちは、今村です

植物工場は、画期的な農業形態ですが、運営には様々なリスクが伴います。

これまで私は10年以上、現場の最前線で働いてきました。

時には、数ヶ月工場の生産がストップした経験もあります。10年以上もいると色々なことがありましたが、私の現場での体験は、コラムにもいくつか書いてます。

本記事では、植物工場を運営する上で直面しうる主なリスクについて、
現場にいた私の目線から、具体的な事例を交えながら解説していきます。

そもそも植物工場ってどんなの?という方は、以下の記事も参考にどうぞ。

目次

植物工場運営の5つの主要リスク

まず、植物工場のリスクを大きく5つに分けて紹介します。

  1. 設備の故障リスク
  2. 病害虫発生リスク
  3. 異物混入リスク
  4. 栽培技術不足リスク
  5. 需要変動リスク

ちなみに、現場レベルではさらに詳細なリスク評価を行います。参考までに、実際の現場でのリスク評価表は以下です。

この表は、リスクアセスメントテンプレートとして、当サイトで配布してますので、興味があれば以下のページを見てください。

1. 設備の故障リスク

植物工場は、空調、照明、養液管理など高度な環境制御システムに依存しています。これらの設備は、植物の生育に最適な環境を維持するために24時間365日稼働し続ける必要があります。そのため、設備の故障は生産に直結する重大なリスクです。

例えば、空調設備が故障した場合、温度や湿度が適切に管理できなくなり、植物の生育に悪影響を及ぼします。照明設備が故障すれば、光合成が阻害され、生育が停滞してしまいます。養液管理システムに問題が発生すれば、植物に必要な養分が供給されず、品質低下や収量減少につながるのです。

これらの設備は、高額で複雑なものが多いため、故障した際の修理や部品交換にも時間とコストがかかります。さらに、修理中は生産が止まってしまうため、出荷予定に影響が出るリスクもあります。

そのため、植物工場では、設備のメンテナンスを適切に行い、故障を未然に防ぐことが極めて重要です。また、万が一の故障に備えて、迅速に対応できる体制を整えておく必要があります。

2. 病害虫発生リスク

植物工場は閉鎖的な環境であるため、一度病害虫が発生すると急速に拡大するリスクがあります。ある植物工場では、持ち込まれたユスリカが大発生し、駆除のために1ヶ月から2ヶ月も生産を停止せざるを得ないケースがありました。この間、売上がまったく立たないのはもちろん、出荷停止によって取引先の信頼を失い、その後の販売にも多大な影響が出てしまいます。

病害虫対策として、徹底した衛生管理と早期発見・駆除体制の整備が重要です。具体的には、施設への入退場時の消毒や防虫ネットの設置、定期的なモニタリングと薬剤の使用などが挙げられます。

特に完全人工光型の植物工場は、一度病虫害が発生すると壊滅的な被害となりやすいので、病原菌や害虫の侵入防止に細心の注意が必要です。

3. 異物混入リスク

植物工場では、衛生管理の徹底により、一般的に病原菌などの混入リスクは低いと言えます。しかし、工場内で使用している備品などに由来する異物混入のリスクは完全には排除できません。

例えば、栽培に使用する資材の劣化により、プラスチック片などが混入する可能性があります。また、作業者の不注意により、髪の毛や虫などが混入するリスクもあります。異物混入は、食品安全上の問題だけでなく、ブランドイメージの低下にもつながりかねません。

そのため、植物工場では、資材の定期的な点検・交換や、作業手順の適切な管理が求められます。また、異物混入が発生した際の迅速な対応体制を整えておくことも重要です。

4. 栽培技術不足リスク

植物工場の運営には、高度な栽培技術を持った人材が必要不可欠です。適切な技術がないと、エネルギーや資材コストに対して生産量が落ち込み、事業の採算性が悪化します。

ある植物工場では、熟練の栽培担当者が退職した後、技術継承が不十分で生産効率が大幅に低下したケースもありました。体系的な栽培ノウハウの蓄積と人材育成が重要な課題といえます。

ただ、実際には、現場力を教育で高めていることは難しいことです。どこの植物工場でも苦労しています。

なぜなら、収益性に直結する具体的なノウハウを得られる情報源は、ほとんどありません。

当サイトでは、私の長年の経験から、試行錯誤を続けてきたノウハウを発信しています。

植物工場の現場力を高めるためには、以下のコンテンツが強力です。

5. 需要変動リスク

植物工場野菜は、市場価格の影響を受けにくいと言われますが、実際には市場動向に左右されるリスクがあります。市場価格が下落した場合、植物工場野菜も価格を下げざるを得なくなります。しかし、市場価格が上昇しても、植物工場野菜の価格にはなかなか反映されにくいのが現状です。

また、需要の変動により、計画した生産量を販売できないリスクもあります。特に生鮮品である野菜は、在庫での調整が効きにくいため、需要予測を踏まえた計画生産が重要となります。

需要変動リスクへの対策としては、販路の多様化によるリスク分散が挙げられます。外食や中食など、複数の販売チャネルを確保することで、特定の市場の影響を受けにくくなります。

リスクマネジメントの重要性

植物工場の運営リスクは多岐にわたりますが、特に高度な環境制御システムに依存する植物工場では、設備故障が生産に直結する点に注意が必要です。

また、病害虫対策や異物混入防止の徹底、高度な栽培技術の継承、需要変動への対応力など、総合的なリスクマネジメントが求められます。

植物工場の運営リスクを電車の運行に例えるなら、設備故障は脱線事故、病害虫は不審者の乗車、異物混入は線路への落下物、栽培技術不足は運転士の技量不足、需要変動は乗客の減少といえるかもしれません。1つ1つは小さな異常でも、放置すれば運行が立ち行かなくなるのです。

まとめ

植物工場の運営には、設備、病害虫、異物混入、栽培技術、需要など、様々なリスクが潜んでいます。これらのリスクを体系的に理解し、総合的にマネジメントしていくことが、植物工場ビジネスの成功の鍵を握ると言えるでしょう。

リスクを認識し、早期発見と迅速な対処を心がけることが、安定的な事業運営につながります。個別の対策については、専門家に相談されることをおすすめします。

植物工場の欠点は何ですか?

植物工場の主な欠点は以下の通りです。

  • 高額な初期投資と運営コスト:高度な環境制御システムや設備が必要なため、初期投資が大きくなります。また、電気代などのランニングコストも高くつきます。
  • 専門的な知識と技術が必要:植物工場の運営には、環境制御や栽培に関する高度な知識と技術が不可欠です。人材の確保と育成が課題となります。
  • 限られた栽培品目:現状、葉物野菜が中心で、果菜類や根菜類の栽培は難しいとされています。
植物工場のメリットは?

植物工場の主なメリットは以下の通りです。

  • 周年・計画生産が可能:環境制御により、季節や天候に左右されずに、計画通りの生産が可能です。
  • 高い生産性:多段式栽培や自動化により、単位面積当たりの収量が高くなります。
  • 安定した品質:最適な生育環境を維持することで、品質のばらつきが少なく、安定した商品を提供できます。
  • 省資源・環境負荷の低減:水や肥料の使用量を最適化でき、廃棄物も少なくなります。また、輸送距離の短縮によりフードマイレージの削減につながります。
  • 食の安全性:衛生管理により、農薬の使用を最小限に抑えられます。また、異物混入のリスクも低減できます。
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