チップバーン完全攻略!意外と知らない原因と根本対策

こんにちは、今村です

葉物野菜を栽培しているなら、
チップバーンは見たことあるんじゃないでしょうか。

このチップバーン…、

レタスなどの葉物野菜で多く見られ、発生すると商品価値が低下し、収益減に繋がります。

植物工場にとって最大の敵であり、避けては通れません。

チップバーンが無くなりません…

そう嘆いている人も多いでしょう。

私も長年悩まされてきました…。

生産者にとって、チップバーンへの対策は喫緊の課題です。

ただ、色々な人と話して思うのが、
本質的な原因と対策を知らない人が意外と多いな…、ってこと。

てなわけで本記事では、チップバーンの原因を深掘りし、
私の経験も踏まえて根本的な対策をわかりやすく解説します。

目次

チップバーンとは?:レタスやイチゴなどの葉に発生する

チップバーンとは、
葉の先端が変色し、枯れたように見える生理障害のことです。

その原因をザックリ言うと、葉のカルシウム不足。
植物工場で栽培されるレタスやイチゴ、ハーブ、葉物野菜などでよく見られます。

しかし、注意してください!

直接的な原因はカルシウム不足ですが、そうなる理由は多岐にわたります。
時には意外な理由があることも。

つまり、カルシウム不足だからと言って、単純に養液のカルシウムを増やしてもチップバーンは無くなりません。

誤解してる人もいますので、お気をつけを。

ちゃんと理解して、根本的に対策しましょう。

チップバーンの原因 – 植物工場は起こりやすい

対策を語る前に原因の話をします。

チップバーンの直接的な原因は、植物体内(特定の部位)のカルシウムが不足すること。

特に植物工場は起きやすい。
という事実もあるんで、その点も含めつつ解説していきますね。

その秘密は、植物工場ならではの栽培環境と、植物体内の水とカルシウムの移動に隠されています。

チップバーン発生のメカニズムを細胞レベルで解説!

植物の細胞は、細胞壁という丈夫な壁で囲まれています。
細胞壁の役割は、細胞の形を保ち、外部のストレスから細胞を守ること。

で、カルシウムには、この細胞壁の構成成分であるペクチンという物質を強める働きがあります。

もしカルシウムが不足すると、細胞壁が弱くなる。
だから細胞内の圧力(膨圧)に耐えきれない。

その結果、
細胞壁が破壊▶チップバーン発生
という流れです。

特に多くのカルシウムを必要とするのが、若い葉や葉の先端部分です。
なぜなら、細胞分裂が盛んで細胞壁が次々に作られているから。

これらの部分ではカルシウム不足が起きやすく、チップバーンが発生しやすいのです。

レタスの真ん中あたりに大量のチップバーンがある光景、
植物工場で働いていたら、一度は見たことがありますよね。

いやー、あれは何度見ても切ないですよね…。

高速栽培との関係

でも、なんで植物工場ばっかり…

まぁ正確には、植物工場じゃなくてもチップバーンは起きます。
しかし、特に植物工場では起きやすい。

なぜか?

それは、植物工場では、光、温度、湿度、CO2濃度などを制御することで、
植物の成長を早める「高速栽培」をしているから。

この高速栽培こそが、チップバーンのリスクを高める要因の一つなのです。

植物は、光合成で得たエネルギーを使って成長します。
光合成が促進されることで植物の成長速度が速まるわけです。

ただし、当たり前ですが、成長に必要な栄養素の量も増えちゃいます。

中には、葉への供給が追いつかない栄養素も出てくる。
その筆頭がカルシウムってわけです。

あとは、植物工場ならではの垂直栽培や、生産効率を高める密植もチップバーンのリスクを高めています。

葉がカルシウム不足になってしまう要因

で、チップバーンの難しさはここから。

それは、カルシウム不足が起きる要因がいくつも考えられること。

例えば、以下のような感じ。

  • 養液中のアンモニア態窒素濃度:
    • アンモニア態窒素を多く吸収すると、植物体内が酸性化し、カルシウムの吸収が阻害される。
  • 養液中のカリウムやマグネシウム濃度:
    • カリウムやマグネシウムは、カルシウムと同じように植物に吸収されるため、これらの濃度が高いとカルシウムの吸収が競合的に阻害される。
  • 根の活性:
    • 根の発達が不十分であったり、根の活性が低い場合は、カルシウムの吸収効率が低下する。
  • 湿度:
    • 湿度が高いと蒸散が抑制され、葉へのカルシウム供給量が低下する。

他にも、現場の構造上の問題、栽培日数、などなど。
可能性はホント無数にあります。

しかし結局のところ、成長速度が早すぎると、どんなにカルシウムを吸収しても追いつかないんですけどね。

では、チップバーンにどう向き合うべきなのか?
しっかりと根本的な対策をしていきましょう。

チップバーンの根本的な対策 – 3つのアプローチ

まずチップバーン対策の前提を一つ。
それは、発生しやすい場所が決まっているってこと。

具体的には、

  • 発生しやすい時期:
    • 収穫前の急激な成長期
  • 発生しやすい場所:
    • 新しく展開した葉、特に外葉に囲まれた内葉

つまり、収穫前の大きくなってきた時期だけに発生するわけです。

ということは、対策もそれに合わせるべきです。

環境制御

  • 湿度管理:
    • 湿度が過剰に高い場合は除湿機を使用するなどして、適切な湿度を保つ。
    • 適切な湿度は、植物の種類や生育ステージによって異なるが、一般的には60~70%程度が良い。
  • 温度管理:
    • 適切な温度管理を行います。レタスなどの葉物野菜の場合、生育適温は20~25℃程度です。
  • :
    • 穏やかな風を送り、葉の周りの湿度を下げることで蒸散を促進し、カルシウムの輸送を促す。ただし、強すぎる風は植物にストレスを与えるため、注意が必要。

栄養管理

  • 養液のpH調整:
    • カルシウムは、pHが5.5〜6.5の範囲で最も吸収されやすくなります。
  • 硝酸態窒素肥料の利用:
    • 硝酸態窒素肥料は、植物体内のpHをアルカリ性にする効果があり、カルシウムの吸収を促進します。

栽培工程の最適化

  • 適切な栽植密度:
    • 栽植密度が高すぎると、株元が過湿になって蒸散が進まない。
    • 適切な栽植密度を保つことで、風通しを良くし、蒸散を促進することが大切。
  • 品種選定:
    • チップバーンに強い品種を選ぶことも有効。

大事なのはここから

さて、割と一般的なチップバーン対策について書きました。

こう書くとカンタンそうに見えますよね。

でも、最も重要なことを書きます。

それは、
チップバーン対策を行うと、基本的に生産性が下がりやすいということ。
なぜなら「高速栽培」を捨てることになるから。

いや、ちょっと待てよ。
成長速度を遅くしたら稼げないじゃねーか。

はい、その通りです。そこが難しいんですよ。

つまり、チップバーンに対処しながら、最高の収量を叩き出さなくてはいけない。

まさに栽培管理担当者の腕の見せどころ。

植物生理と環境制御を深く理解し、適切に改善しなくてはいけません。

チップバーン対策と生産性を両立するテクニックはある。

現状、多くの植物工場がチップバーンに悩まされています。
すでに上記の対策を講じている植物工場も多いでしょう。

では、なぜチップバーンは消えないのか。

実際のところ、チップバーン対策をしつつ生産性も高めるテクニックはいくつもあります。
環境制御、栽培工程の工夫、現場運用の改善。

意外な改善で、劇的に状況が変わるケースも。

そういったテクニックは、当サイトの以下のコンテンツの中でけっこう書いてます。
以下も合わせてどうぞ。

少し値は張りますが、読んで得られるノウハウでの改善効果を考えると、
費用対効果は高いと思っています。

まとめ|チップバーンを克服し、高品質な野菜生産を!

チップバーンは植物工場における深刻な問題の一つですが、
原因と対策を正しく理解すれば防ぐことができます。

本記事で紹介した内容を参考に、チップバーンの発生を抑制し、高品質な野菜を安定的に生産できるよう努めましょう!

おまけ。チップバーンの影響って

最後に、長年植物工場でレタス栽培と向き合ってきた私の意見。

実際のところ、チップバーンが出てしまっても販売できないわけではないでしょう。
だって、食べられないわけではないし。

とはいえ、見た目は非常に悪い。

「野菜は見た目で選ばれる」という現実があるし、良い状況でないのは確かです。

結局、チップバーンが出てしまうと、
顧客からの信頼を失うリスクを考えて、出荷しない、もしくはチップバーン部分のみ取り除いて出荷することになります。

でも、ほんの小さなチップバーンすら躍起になって取り除いている現場もあります。
本当にそこまでする必要はあるんでしょうか。

無闇に葉を千切ると、その葉から腐敗が進むリスクがありますし、
総合的に考えてチップバーンを取り除くほうがマイナスが大きくないでしょうか?

チップバーン、過剰に気にしすぎずに、
問題があるレベルを見極めて対処していきましょ。

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