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作物が「徒長」するメカニズムと対策を徹底解説


こんにちは、今村です
実は植物工場って徒長が起きやすい環境です。
収益性のために密植が前提みたいなところがありますしね。
この密植が徒長の要因になるわけです。
逆に言うと、植物工場では適切な環境管理ができるからこそ、徒長を未然に防ぐことも可能です。
まずは、「なぜ徒長が起きるのか」というメカニズムを理解するところから。
この記事では、徒長の基礎知識から発生メカニズム、そして現場ですぐに使える対策まで、体系的に解説していきます。




そもそも「徒長」って何? – 基礎から理解する


植物を育てていると、時に「あれ?なんだかひょろひょろしている…」と感じることはありませんか?
茎が異常に長く伸びて細く、節間(葉と葉の間)が広がり、全体的に弱々しい状態。
これが「徒長」です。
徒長とは、植物が本来あるべき姿よりも過剰に茎が伸長してしまう現象。
「徒(いたずら)に長くなる」という言葉通り、植物にとって無駄な伸長が起きている状態なのです。
健全な植物と徒長した植物を並べてみると、その違いは一目瞭然です。
以下に健全な植物と徒長した植物の特徴を表形式で整理しました:
健全な植物 | 徒長した植物 |
---|---|
茎が太くしっかりしている | 茎が細く、時に半透明に見える |
節間(葉と葉の間の距離)が適度に詰まっている | 節間が異常に長い |
葉が厚く、色が濃い | 葉が小さく薄い、色も淡い |
全体的にコンパクトで頑健な印象 | 全体的に弱々しく、倒れやすい |
育苗トレイの中で競うように上に伸びた苗や、窓際に置いた観葉植物が光を求めて一方向に傾いて伸びているのも徒長の一種です。こうした植物は見た目の問題だけでなく、生育面でも大きなハンディを背負うことになります。
徒長かどうか判断するための簡単なチェックポイントは以下。
- 茎の太さチェック:同じ品種・年齢の健全な植物と比べて、茎が明らかに細いかどうか
- 節間距離の測定:節間(葉と葉の間)の距離が通常より長くないか
- 立ち姿の観察:支柱なしで自立できるか、風で簡単に倒れないか
- 葉の質感:葉が通常より小さく、薄くないか
- 色調の確認:全体的に色が淡く、黄緑がかっていないか
これらのポイントを確認すれば、徒長しているかどうかすぐに判断できるでしょう。
特に複数の症状が同時に見られる場合は、徒長が進行していると考えられます。
なぜ徒長は問題なの? – 収量・品質への影響
徒長は見た目の問題だけではありません。実際の収益に直結する深刻な問題です。
葉物野菜の場合、徒長によって収穫物の重量が30%も減少するケースもあります。徒長が進むほど、光合成の効率が落ち、エネルギーが茎の伸長に費やされて実や葉への分配が減るためです。
弱い・薄い・味が落ちる:品質低下の実態
徒長した植物は収量だけでなく、品質面でも多くの問題を抱えています:
- 栄養価の減少:光合成産物の生産・蓄積が不十分で、野菜の場合はビタミンやミネラル含有量が低下
- 味・香りの劣化:糖度や香り成分の蓄積が不十分になり、果実や葉の風味が損なわれる
- 日持ちの悪化:細胞壁が薄く弱いため、収穫後の劣化が早い
徒長した作物は栽培管理の面でも追加コストを生み出します:
- 弱い茎のためわずかな接触でも傷つきやすく、作業時の注意が必要
- 倒伏しやすいため管理作業の手間が増える
- 生育不良により栽培期間が長引き、資源投入量が増加する
これらの要因により、人件費や資材費が増大し、結果的に利益率の低下につながります。
そして、病気にかかりやすくもなります。
徒長することで、病気に対する防御機能が弱まるためです。
- 細胞壁が薄く、病原菌の侵入に対する物理的バリアが弱い
- 二次代謝産物(植物が自己防衛のために作る化合物)の生成量が少ない
- 水分・栄養バランスが乱れ、病害虫に対する抵抗力が低下する
- 茎内部の通導組織が弱く、傷害や病害の拡大が早い
病害虫被害は収量・品質のさらなる低下を招き、悪循環に陥りやすくなります。
この記事を読み進めることで、徒長の基礎知識を体系的に学ぶことができるでしょう。
次章からは、徒長が起きるメカニズムについて、さらに詳しく掘り下げていきます。
徒長はこうして起きる – 植物の伸長メカニズム


前章では徒長の基本的な症状や問題点について確認しました。
では、なぜ植物はひょろひょろと伸びてしまうのでしょうか?
ここでは、徒長の背景にある植物生理学的なメカニズムを理解していきましょう。
植物ホルモンのバランス崩壊:伸びすぎる原因
徒長の主役はジベレリンとオーキシンという2つの植物ホルモンです。
ジベレリンは主に茎の伸長を促進するホルモンで、オーキシンは細胞の伸長や分裂に関わります。
通常、これらのホルモンは植物の健全な成長のために適切なバランスで働いています。
ところが、環境条件が悪化すると、このバランスが崩れてしまいます。
特に光が不足すると、ジベレリンの活性が高まり、植物は「もっと光を求めて伸びよう」というサバイバル反応を起こします。
一方、エチレンやアブシジン酸といったホルモンは伸長を抑制する役割を持ちますが、徒長条件下ではこれらの働きが弱まり、抑制がかからなくなります。
細胞はどう変化する?:伸長と分裂の関係
徒長が起きると、細胞レベルで明確な変化が見られます。
健全な植物では、茎の成長は「細胞分裂」と「細胞伸長」のバランスで進みます。
しかし、徒長状態では、細胞分裂よりも細胞伸長が優位になります。
具体的には:
- 細胞数:徒長した植物は健全な植物と比べて細胞数が少ない
- 細胞の長さ:一つ一つの細胞が異常に長く伸びる
- 細胞壁:伸びた細胞は薄い細胞壁しか作れない
この結果、徒長した茎は細胞が少なく、一つ一つが縦に伸びた状態に。
全体として細く弱い構造になるというわけです。
顕微鏡で観察すると、健全な茎と徒長した茎の違いは一目瞭然。
健全な茎の細胞は短くて数が多く、細胞壁も厚いのに対し、徒長した茎の細胞は細長く、細胞壁も薄いのです。
光に反応する仕組み:植物が光を感じるメカニズム
植物は私たち人間とは違う方法で光を「見て」います。
その主役がフィトクロムと呼ばれる光受容体タンパク質です。
フィトクロムは特に赤色光と遠赤色光(日陰に多い光)を感知するセンサーの役割を果たします。
日陰や光不足の状態では、フィトクロムのバランスが変わり、植物に「光が足りない、もっと上に伸びよう」という信号を送ります。
これらの光受容体が適切に働くためには、十分な光量とバランスの取れた光質(波長バランス)が必要。
光環境が不適切だと、植物は「光を探す」ための徒長反応を起こしてしまいます。
徒長時に植物内部で起きていること
植物の成長には、光合成で得るエネルギーと、呼吸で消費するエネルギーのバランスが重要です。
徒長状態では、このバランスが大きく崩れます:
- 光合成効率の低下:薄く小さな葉では光合成能力が制限される
- 呼吸量の増加:急速な伸長のためエネルギー消費が増える
- エネルギー不足:結果として植物全体がエネルギー不足状態に
このエネルギー不足は「貧弱な植物体」という形で現れます。
十分なエネルギーがないため、茎や葉を丈夫に作ることができないのです。
徒長で起こること ① 栄養の行き先が変わる
健全な植物では、光合成で作られた糖類(同化産物)は、葉、根、茎、花、果実などにバランスよく分配されます。
しかし、徒長状態では分配パターンが大きく変化しちゃいます。
- 茎への配分が増加:伸長のために多くの資源が茎に振り向けられる
- 根への配分が減少:根の発達が犠牲になり、養水分吸収能力が低下
- 果実・花への配分減少:生殖器官の発達が抑制され、収量低下につながる
この分配異常が、徒長した植物の全身的な弱さの原因になります。
茎だけが伸びて他の部位の発達が不十分になるため、植物全体としてのバランスが崩れるのです。
徒長で起こること ② 細胞壁が弱くなる
徒長した植物の茎が弱い理由は、細胞壁の質の低下にあります。
健全な植物の細胞壁は、丈夫なセルロースとリグニン(木質成分)を十分に含んでいます。しかし、徒長状態では:
- セルロース含有量が減少
- リグニン化(木質化)が不十分
- ペクチンなど細胞接着物質が少ない
これらが組み合わさり、徒長した茎は構造的強度が大幅に低下します。
結果として、わずかな風や雨、さらには自重さえ支えられなくなり、倒伏しやすくなるのです。
徒長で起こること ③ 昼と夜の成長リズムの変化
植物には本来、昼と夜で異なる成長パターンがあります。多くの植物では:
- 昼間:光合成に集中し、伸長成長は比較的緩やか
- 夜間:貯蔵した炭水化物を使って伸長成長が活発化
徒長状態では、この自然なリズムが乱れ、夜間の伸長成長が過剰になります。特に夜温が高い状態では、この傾向が顕著です。
健全な植物では、夜間に温度が下がることで伸長を適度に抑制するメカニズムが働きますが、徒長条件下ではこの抑制が効かなくなり、夜間も止まらずに伸び続けるのです。
徒長 – 原因を知らねば対策できぬ


前章で徒長のメカニズムについて理解を深めました。
効果的な対策を講じるために、その原因を正確にしていきましょー。
徒長の原因は一つではなく、複数の環境要因が複雑に絡み合っています。
ここでは、植物工場や施設栽培で特に注意すべき、主な徒長の原因について掘り下げます。
光不足が招く徒長 – 量と質の問題
徒長を引き起こす最も一般的な原因は光不足です。
光は植物にとって単なるエネルギー源ではなく、成長の方向性や形態を決定する情報源でもあります。
足りていますか?作物別の必要光量
作物によって必要な光の量(光強度)は大きく異なります。葉菜類(レタスなど)は比較的低い光強度でも育ちますが、果菜類(トマトやイチゴなど)はより多くの光を必要とします。
「うちの作物は光が足りているはず」と思っていても、実際には不足していることがよくあります。特に、成長が進むにつれて葉面積が増え、下部の葉には光が届きにくくなるため、常に注意が必要です。
光質のバランスが徒長を左右する
光の質(波長)も徒長に大きく影響します。植物は光の波長バランスを通じて自分の置かれた環境を感知し、成長の方向性を決定しています。
特に重要なのが遠赤色光(波長約730nm)です。植物は遠赤色光を通じて周囲の状況を「読み取る」能力を持っています。
自然界では、他の植物の葉を通過した光は遠赤色光の比率が高まります。これは植物の葉が光合成に使う赤色光を吸収し、遠赤色光は通過させやすいためです。
この「赤色光に対する遠赤色光の比率」(R/FR比)が低下すると、
植物は「周囲に他の植物がある=競争状態にある」と認識し、茎を伸ばして光を獲得しようとする反応を示します。
これが「日陰回避反応」で、徒長の主要な生理的メカニズムの一つです。
植物工場のような人工光環境では、遠赤色光が少なすぎる場合もあります。
自然光に比べて遠赤色光が極端に少ない光環境では、一部の植物で正常な形態形成が妨げられることもあるため、作物に応じた適切な光質バランスの調整が重要です。
隣の植物が影を作る:群落内の光環境
植物が密集すると、互いに影を作り合い、群落内部の光環境は劇的に悪化します。
これが相互遮蔽と呼ばれる現象で、徒長の主要因となります。
植物の下部や内部に位置する葉に十分な光が届かなくなると、それらの部位でフィトクロムのバランスが変化し、徒長が起こります。また、植物は隣接する他の植物の存在を「感知」し、光を競い合うように徒長する性質も持っています。
これは植物が自然界で生き残るための戦略ですが、栽培環境では収量・品質の低下につながります。
詰めすぎは禁物 – 密度と配置の問題
栽培密度は収量と直接関係するため、ついつい詰め込みがちですが、これが徒長の大きな原因になります。
収量と徒長のバランス:密植のメリット・デメリット
植物同士が近すぎると、限られた光を巡って「競争」が始まります。これが先述した「回避反応」を引き起こし、植物は隣の植物より高く伸びようと徒長してしまいます。
栽培面積あたりの収量を最大化したいという願望から、ついつい密植したくなりますが、そこには明確なトレードオフが存在します。
密植のメリット:
- 単位面積あたりの植物数増加による潜在的な収量増
- 床面積の効率的な利用
密植のデメリット:
- 徒長による品質低下
- 通気性の悪化による病害リスク増大
- 個体あたりの収量・品質の低下
とはいえ、そもそも植物工場は狭いスペースで多くの作物を育てるビジネスですよね。
密植ができなきゃ植物工場の意味がありません。
このへんは、作物の品質と収益性を両立するための、
細かい現場のテクニックも存在します。
徒長対策の他にも、そういったノウハウは、以下のコンテンツにけっこう書いてます。
少し値は張りますがコスパは高いです。合わせてどうぞ。
育苗トレイの詰めすぎが後々響く理由
育苗段階での密植は、後の生育に大きな影響を及ぼします。苗が徒長した状態で定植すると、その後の環境が改善されても完全に回復することは難しいのです。
育苗トレイのセル数(例:72穴、128穴、200穴など)は、単に「何本作れるか」だけでなく、「どのような品質の苗を育てるか」という観点から選ぶべきです。
育苗期間が長い作物ほど、セル数の少ない(=一つのセルが大きい)トレイを選ぶことで、徒長リスクを減らせます。
徒長を防ぐ実践テクニック – 環境制御の基本


前章までで徒長のメカニズムとその原因について理解を深めてきました。
ではいよいよ、実際に徒長を防ぐための具体的な対策に入っていきましょう。
これらの方法を適切に組み合わせることで、徒長リスクを大幅に低減できます。
光環境を最適化する方法
光環境の最適化は、徒長防止の最も基本的かつ効果的な対策です。
光は量(強度)と質(波長バランス)の両面から考える必要があります。
光をムダにしない:反射材活用の実践テクニック
植物が受け取る光は、光源から直接届くものだけではありません。
反射した光も重要な役割を果たします。
施設内部の反射率を高めると、同じ照明設備でも植物に届く光の量を20~30%増加させることも可能です。
具体的な反射材活用テクニック:
- 栽培ベッド側面への反射シート設置:
- 特に高設栽培では、ベッドの側面に反射材を設置することで、横方向からも光を供給でき、植物体の中・下部への光環境が改善します。
- ハウス内壁面の塗装・被覆:
- 白色塗料で内壁を塗装したり、反射性の高いフィルムで覆ったりすることで、施設全体の光利用効率が高まります。
光むらを解消する配置のコツ
光の均一性も徒長防止には欠かせません。
光むらがあると、暗い部分で徒長が起きやすくなるだけでなく、植物の生育にもムラが生じます。
光むら解消のテクニック:
- 照明の適切な配置:
- LED照明を使用する場合、照明間の距離を適切に設定し、照射範囲が重なるよう配置します。一般的に、照明高さの半分程度の間隔が目安です。
- 光の回り込みを考慮したレイアウト:
- 植物体の配置も重要です。列や行の方向を光源に対して最適な角度にすることで、影の影響を最小化できます。
実践テクニック:真上からだけでなく、斜め・横方向からも光が届くよう工夫することで、植物体の中・下部まで光が行き渡り、全体的に徒長を防ぐことができます。
最適な栽植密度と配置のテクニック
適切な栽植密度の設計は、徒長防止と収量確保を両立させるための重要な要素です。
栽植密度は「単位面積あたりの株数」として表されますが、実際に重要なのは「植物体が占める空間」です。
成長するにつれて植物体は大きくなるため、初期密度と最終密度を区別して考える必要があります。
密度設計のポイント:
- 光透過率を基準にする:
- 植物体を通過する光の割合(光透過率)が20%以下になると徒長リスクが高まります。定期的に群落内部の光環境をチェックし、透過率が20%を下回る前に間引きや収穫を検討しましょう。
- 葉面積指数(LAI)の活用:
- LAIは単位土地面積に対する葉の総面積の比率です。多くの作物では、LAIが3〜4程度で光利用効率が最大になります。それ以上になると下部への光透過が悪化し、徒長リスクが高まります。
- 株元スペースの確保:
- 特に葉菜類では、株元周辺に十分なスペースを確保することで、下部への光到達が改善し、徒長を防止できます。
成長に合わせた間引き・移植のタイミング
植物の成長は指数関数的です。小さい苗が急に大きくなり、あっという間に混み合ってしまうことがよくあります。
成長に合わせた適切な間引きや移植が徒長防止の鍵となります。
間引き・移植の判断基準:
- 葉の重なり率:隣接株との葉の重なりが20%を超えたら間引きや移植を検討します。
- 葉色の変化:下部の葉が黄化し始めたら、それは光不足の兆候。すぐに対応が必要です。
- 生育ステージに基づく計画的移植:移植タイミングを計画しておくと管理がしやすくなります。
実践テクニック:実際の生育状況を観察して柔軟に対応することが大切です。
コスパの高い対策を選ぶ
徒長対策にも投資が必要です。限られた予算で最大の効果を得るためには、コストパフォーマンスを考慮した対策選びが重要になります。
投資効果の高い徒長対策ランキング
すべての対策を一度に導入するのは難しいことが多いです。そこで、投資対効果の高い順に対策を実施していくのが現実的でしょう。
コスパの高い徒長対策ランキング:
- 反射材の設置:低コストながら光環境を15〜30%改善可能
- 適正密度の徹底:追加コスト不要で品質・収量の両方を向上
- 照明の高さ調整:既存設備の活用で光環境を最適化
- 間欠照明の導入:電力消費を抑えつつ光質改善が可能
- 補光設備の増強:コストは高いが確実な効果
実践テクニック:まずは1〜3の低コスト対策から始め、その効果を評価した上で、必要に応じて4以降の対策を検討するのが賢明です。
徒長対策と省エネは一見相反するように思えますが、工夫次第で両立可能です。
「光を増やす=電気代増加」という固定観念から脱却し、「光の質と効率的な使い方」という視点で対策を考えることが大切です。例えば、反射材の活用は追加の電力を必要とせず、既存の光をより効率的に利用する省エネ型対策です。
徒長の早期発見と対処法 – 現場ですぐ使える技術


どんなに予防に努めても、時には徒長の兆候が現れることがあります。
では、どうするか?
とにかく早期発見と素早い対処に努めましょう。
ここでは、徒長の初期症状を見逃さない方法と、すでに徒長が始まってしまった場合の具体的な対処法について解説します。
徒長のサインを見逃さない
徒長は突然現れるわけではありません。初期段階で適切なサインを読み取り、迅速に対応することが重要です。
日々の栽培管理の中で、以下のチェックポイントを意識してみてください。
- 節間の伸長:通常より節間が10%以上長くなっていないか
- 茎の色と太さ:健全な茎と比較して色が薄く、細くなっていないか
- 葉の向き:葉が上向きに伸びる傾向(光を求める姿勢)がないか
- 葉の大きさと厚み:新しく展開する葉が小さく薄くなっていないか
- 群落内部の様子:下部の葉が黄化し始めていないか
これらのサインは、徒長が本格化する前の「警告信号」です。特に複数の兆候が同時に現れた場合は、すぐに対応が必要です。
記録の取り方とデータ活用法
徒長管理に限らず、栽培記録は体系的に取ることで大きな価値を生み出します。
徒長に関する記録の取り方と活用法を以下に示します:
- 定点写真の活用:
- 同じ角度・距離から定期的に写真を撮影
- 時系列で並べて比較することで微妙な変化も可視化
- デジタル定規ツールの活用で写真上での測定も可能
- 環境データとの連携:
- 徒長兆候と環境データ(光・温度・湿度など)を照合
- 原因特定と再発防止に役立つ相関関係を見出す
実践テクニック:スマートフォンのメモやカメラ機能を活用したシンプルな記録から始め、徐々にデジタル化・体系化を進めるのがおすすめです。無理なく続けられる記録方法を選びましょう。
徒長が起きてしまったときの対処法
予防対策を講じていても、時には徒長が起きてしまうことがあります。その場合の対処法を見ていきましょう。
軽度徒長からの回復テクニック
軽度の徒長であれば、適切な対応で回復できる可能性があります。
以下の回復テクニックを検討してください:
- 補光の追加や反射材の設置で光環境を強化
- 株間を広げ、光の回り込みを改善
- 可能であれば日中高温・夜間低温(正のDIF)を避ける
実践テクニック:回復措置は一度に複数を組み合わせると効果的ですが、あまりに急激な環境変化はさらなるストレスになる可能性もあるため、段階的に実施しましょう。
深刻な徒長の場合の判断ポイント
徒長が進行し、深刻な状態になった場合は、回復を目指すべきか、植え替えるべきかの判断が必要です。
以下の判断ポイントを参考にしてください:
- 回復可能性の判断基準:
- 茎の状態:極端に細く柔らかい場合は回復困難
- 根の状態:健全な根系があれば回復可能性が高い
- 先端部の状態:生長点が健全であれば回復可能性あり
- 栽培期間との兼ね合い:
- 栽培初期なら植え替えが効率的な場合も
- 収穫間近なら現状維持も検討
- 根本的な原因への対処:
- 同じ条件で植え替えても再発する可能性
- 原因特定と環境改善が先決
徒長発生時の経済的判断も重要です。
感情に流されず、冷静な経済計算に基づいた判断が求められます。
徒長が軽度の場合は対策継続、重度の場合は思い切った更新が経済的に有利なことが多いです。
「まずは悪化を止める」ことを最優先し、その後で回復策を講じるという2段階アプローチが効果的です。
徒長の早期発見と迅速な対処は、栽培成功の鍵を握る重要なスキルです。日々の観察と記録、そして状況に応じた適切な判断を心がけましょう。
まとめ


この記事では、作物の徒長について多角的に解説してきました。
徒長とは、植物が本来あるべき姿よりも過剰に茎が伸長する現象であり、単なる見た目の問題ではなく、収量・品質・病害抵抗性など多くの面で深刻な影響をもたらします。
徒長の主な原因は光不足と密植の2つです。
徒長を防ぐためには、以下のポイントが重要です:
- 光環境の最適化:反射材の活用や光むらの解消で、同じ照明設備でも効率良く光を届ける
- 適切な栽植密度の維持:植物の成長に合わせた間引きや移植で、常に適正な空間を確保する
- 早期発見と迅速な対処:日々の観察で徒長の兆候を見逃さず、初期段階で対応する
すでに徒長が起きてしまった場合も、軽度であれば光環境の改善や株間調整などで回復できる可能性があります。
徒長対策は、栽培の基本中の基本です。本記事の知識を日々の管理に活かし、健全でコンパクトな作物づくりを実現しましょう。


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