こんにちは、今村です
最近、注目を集めている植物工場。
私はそんな植物工場で、10年以上働いてきました。
この10数年で、植物工場産の野菜は食卓に欠かせないものになったなー。と思います。
実は、皆さんの食卓に並ぶ野菜も、植物工場で作られているかもしれません。
未来の食を支える存在として期待されている植物工場。一体どんなところで、どうやって野菜を作っているのでしょうか?
この記事では、植物工場について、特に初心者の方向けにわかりやすく解説していきます!
普段何気なく食べている野菜が、どのように作られているのか、その裏側を知ってみませんか?この記事を読めば、植物工場のことがよくわかります。
植物工場が注目される理由
では、なぜ植物工場が注目されるのか。
それは、従来の農業には様々な問題があって、それらを解決する可能性を秘めているからです。
例えば、
- 地球規模の食料需要増加への対応: 世界の人口は増加の一途をたどり、2050年には90億人を突破すると予測されています。
- 気候変動への適応: 地球温暖化による異常気象の発生など、気候変動は農業に大きな影響を与えています。干ばつや洪水、気温の上昇などにより、農作物の収穫量が減少し、品質が低下するケースも増えています。
- 食の安全・安心への高まる関心: 農薬や化学肥料の使用量を減らし、環境負荷の低い方法で生産された農作物が求められています。
植物工場は、作物の栽培環境を人工的にコントロールできることが特徴です。これらの問題にも対処できるというわけです。
まぁ植物工場であれば、完全に外部環境に左右されないわけではないのですが。
この部分は、現場にずっといた私の視点から、植物工場のリスクということで記事にしています。参考までに下記をどうぞ。
植物工場 vs 従来の農業
と言っても、なかなかイメージが湧きづらいですよね。
そこで、従来の農業と比較しながら、植物工場の特徴をわかりやすく見ていきましょう!
従来の農業 | 植物工場 | |
---|---|---|
場所 | 広大な農地が必要。気候や土壌に適した場所を選ぶ。 | 建物内や閉鎖空間で栽培するため、場所の制約が少ない。都市部や耕作放棄地など、従来農業に適さない場所でも建設可能。 |
環境 | 気温、湿度、日照時間など、自然環境に左右される。台風や干ばつなどの影響を受けやすい。 | 温度、湿度、光、二酸化炭素濃度などを人工的に制御。天候に左右されず、一年中安定した環境で栽培できる。 |
栽培方法 | 土壌を用いた栽培が一般的。土作りや水やり、雑草対策など、多くの手間と時間が必要。 | 土壌を使わない水耕栽培や、少量の土壌で栽培する養液土耕などが主流。自動化システムにより、省力化・効率化を実現。 |
収穫量 | 気候や病害虫の影響を受けやすく、収穫量が不安定な場合もある。 | 環境を制御することで生育が促進され、従来の農業に比べて、単位面積当たりの収穫量が多い。 |
品質 | 環境ストレスや害虫被害により、品質が低下することがある。 | 最適な環境で栽培されるため、品質が均一で高品質な野菜を生産できる。 |
農薬 | 病害虫の発生を抑えるため、農薬を使用することが一般的。 | 閉鎖環境のため、害虫の侵入リスクが低く、農薬の使用量を大幅に削減できる。無農薬栽培も可能。 |
このように、植物工場は従来の農業に比べて多くのメリットがあり、未来の農業の形として期待されています。
作業の自動化や機械化をするのも、従来の農業よりやりやすいという特徴があります。その点は以下の記事にも書きました。
植物工場の種類
ちなみに植物工場と一言で言っても、実はいくつかの種類があります。
栽培方法や利用する光源によって分類され、それぞれに特徴があります。例えば、
- 完全人工光型: 太陽光を使わずに、LEDなどの人工光のみで植物を育てるタイプ。
- 太陽光利用型: 太陽光を最大限に活用して植物を育てるタイプ。
- 併用型:太陽光と人工光のどちらも使うタイプ。
栽培する作物とか、規模によって適正があるので、どのタイプが適しているかを見極める必要があります。
この点は、以下の記事でも詳しく解説しているので、見てください。
植物工場の最先端技術
さて、植物工場が安定的な環境で作物を育てられることは説明しました。
そして、植物の生育を最大限に引き出すために、様々な最先端技術が活用されていますよね。
まるでSF映画の世界に出てくるような、近未来的な栽培システムが、高品質な野菜を安定して供給することを可能にしています。
どんなシステムが使われているのか、代表的なものをピックアップします。
水耕栽培
水耕栽培とは、土壌を使わずに、水と肥料を混ぜた培養液だけを使って植物を育てる方法です。
近未来的なイメージを持つ方もいるかもしれませんが、水耕栽培は、すでに世界中で注目されている、持続可能な農業の重要な技術の一つなのです。
水耕栽培では、植物の根は、土壌の代わりに、培養液に浸されています。培養液には、植物の生育に必要な栄養素(窒素、リン酸、カリウムなど)がバランス良く溶け込んでおり、植物は根から効率よく栄養を吸収することができます。
この培養液の濃度や温度、循環などを緻密にコントロールすることで、植物の生育を最適な状態に保つことが可能です。
そのメリットは、省スペース化・効率化であること。水資源の節約、安定した収穫、農薬の使用量削減にも貢献します。
LED照明
植物工場において、LED照明はもはや欠かせない存在となっています。
太陽光に代わる光源として、植物の成長を大きく左右する役割を担っています。従来の植物工場では、蛍光灯や高圧ナトリウムランプなどの照明が使われていました。しかし近年、LED照明技術の進化は目覚ましく、植物工場でもそのメリットが注目され、急速に普及が進んでいます。
LED照明が植物工場で選ばれる理由:は、省エネ・長寿命、発熱量が少ない、コンパクトで設置しやすい、光の波長や照射時間のコントロールが可能といった点です。
環境制御システム
植物工場では、植物の成長を最大限に引き出すために、「環境制御システム」と呼ばれる、まるで植物にとって生きやすい環境を作り出すシステムが導入されています。
具体的には、温度管理、湿度管理、二酸化炭素濃度管理、空気循環などをセンサーやコンピューターを使って自動で制御することで、植物にとって常に最適な環境を維持することが可能になります。
環境制御システムは、植物工場の心臓部とも言える重要なシステムであり、高品質な野菜を安定して生産するために欠かせない技術なのです。
システムで集めたデータは、栽培を最適化するために必須なものとなります。以下の記事も確認してください。
植物工場ビジネスの可能性
ではビジネスの観点から植物工場を考えていきましょう。
植物工場は、安定供給、高品質、環境負荷の低減といったメリットから、ビジネスチャンスとしても熱い視線が集まっています。
ちなみに、どれくらい注目されているのか。これまでの歴史やトレンドについては以下の記事でも解説してます。
ただし、もちろんメリットばかりではありません。参入前に、メリットとデメリットをしっかりと理解しておくことが重要です。
メリット
- 安定収入: 天候に左右されず、安定した生産と供給が可能なので、計画的な収益が見込めます。
- 高品質・高付加価値: 品質の高い野菜を生産できるため、高価格での販売やブランド化も期待できます。
- 環境負荷の低減: 水や肥料の使用量削減、農薬の使用抑制など、環境に配慮した持続可能なビジネスモデルを構築できます。
- 新規参入しやすい: 従来の農業に比べて、土地や経験が少なくても参入しやすいというメリットがあります。
- 成長市場: 世界的な人口増加や食料問題を背景に、植物工場市場は今後も成長が見込まれています。
デメリット
- 初期費用が高い: 施設建設や設備導入に多額の初期費用がかかります。
- ランニングコスト: 電気代や人件費などのランニングコストも考慮する必要があります。特に、完全人工光型は電気代が高額になりやすい点に注意が必要です。
- 技術的な知識・ノウハウが必要: 植物工場の運営には、栽培技術や設備管理などの専門知識が必要です。
- 市場競争の激化: 植物工場ビジネスへの参入が増加しており、競争が激化する可能性があります。
- 消費者の理解: 植物工場で生産された野菜に対する、消費者の理解がまだ十分ではありません。
植物工場ビジネスは、多くの可能性を秘めている一方で、克服すべき課題も存在します。参入前に、メリットだけでなくデメリットも十分に理解した上で、事業計画を慎重に進めることが重要です。
植物工場が抱える課題
植物工場ビジネスのデメリットは先ほど書きましたね。
私は長年、植物工場の現場にいますが、実はまだまだ課題も多いんですよね…。
特に注意しておきたいポイントをまとめます。正直言うと、植物工場に参入してくる大手企業が相次いで撤退しているのも、下記のようなことが原因です。
- 高い初期費用とランニングコスト: 植物工場の建設には、施設や設備に多額の初期費用がかかります。また、電気代や空調費用などのランニングコストも、従来の農業に比べて高額になりがちです。特に、完全人工光型植物工場では、LED照明や空調に多くの電力を使用するため、コスト削減が大きな課題となっています。
- 栽培技術の高度化と人材不足: 植物工場では、植物生理学や環境工学などの専門知識を駆使して、野菜を効率的に生産する必要があります。しかし、これらの知識や経験を持つ人材は不足しており、人材育成が急務となっています。
- 品目や品種の限定: 現在の植物工場では、栽培可能な作物の種類が限られています。レタスなどの葉物野菜が中心であり、米や麦などの穀物類、果樹、根菜類など、栽培が難しい作物も多く存在します。
これらの課題を解決するために、世界中で様々な研究開発や取り組みが進められています。例えば、太陽光を利用した植物工場や、AIを活用した環境制御システムの開発など、省エネ化や効率化を目指した技術革新が進んでいます。
とはいえ十分に活用されているとは言えません。まだまだ人の手に頼っている部分が大きいです。
植物工場は、まだ発展途上の技術というわけです。
植物工場ビジネスを成功させる秘訣
では、植物工場ビジネスで成功するために、どのようなことを意識すべきか。
そのためには、植物工場の持つ可能性を最大限に活かしながら、市場のニーズを的確に捉え、独自の強みを確立していく必要があります。
以下のようなポイントは押さえておいてください。
- ターゲットとニーズを明確に: 誰に、どんな野菜を届けたいのか?ターゲットとする市場を明確化し、そのニーズに合致した野菜を生産することが重要です。
- 例:近隣のレストラン(珍しいハーブやベビーリーフなど、付加価値の高い野菜)、スーパーマーケット(品質が安定した、一般的な野菜)、健康志向の消費者(機能性野菜や無農薬野菜など)
- 差別化戦略: 競合との違いを明確にする!植物工場ビジネスは、新規参入が相次いでおり、競争が激化しています。そのため、他の工場との差別化が重要になります。
- 差別化ポイント:品質、品種、価格、サービス、ブランドストーリー
- イノベーションを起こせ: 常に進化を続ける!植物工場は、技術革新の激しい分野です。常に最新技術や情報を取り入れ、生産効率の向上やコスト削減に取り組むことが重要です。
- 例:自動化・省力化システムの導入、再生可能エネルギーの利用、新たな品種開発や栽培技術の研究開発
- 情報発信で共感を呼べ: 植物工場の魅力を発信!植物工場の認知度向上と理解促進のために、積極的な情報発信が重要です。ウェブサイトやSNSなどを活用し、消費者に植物工場のメリットや生産者の想いを伝えましょう。
- 例:植物工場の仕組みや生産へのこだわりを発信、栽培の様子や収穫の喜びを動画や写真で紹介、消費者を対象とした見学会や収穫体験イベントの実施
つまり、結論としては、「ただ野菜を作って売ろう」では失敗してしまいます。
例えば、異業種から参入する企業はプロダクトアウトの視点であるケースが多いですが、マーケットインの視点を持たなければなりません。
野菜と言えど、「売れるものを作る」という視点がなければ売れません。
それと、植物工場はある程度の規模がなければ黒字化は難しいです。この点もビジネスを成功させるポイントですので、詳しくは下記の記事もどうぞ。
植物工場の現場をレベルアップさせたいなら、私も協力します
植物工場ビジネスは、成長市場と注目されていますが、経営は容易ではありません。
「生産性が上がらない」「コストが削減できない」「販路が開拓できない」など、様々な課題に直面する植物工場経営者も多いのではないでしょうか?
そんな悩みを抱える現場に対し、私に協力させてください。
例えば、オンライン相談はいつでも受け付けているので、気軽に連絡ください。
- オンライン相談で解決できること: 現場や経営に関する様々な悩みを相談することができます。
- 例:栽培技術の向上、コスト削減、販路拡大、経営戦略
- オンライン相談のメリット: 時間と場所を選ばない、低コスト
私が現場の最前線にいた時は、常に「誰か相談できる人がいてほしい…」と思っていましたが、そんな人は見つかりませんでした。
そんなサービス自体、ないですしね。
というわけで、現場の人に寄り添ったリアルなアドバイスはさせてもらえると思います。
うまく活用してもらえば、経営の課題を解決し、事業をさらに成長させることが期待できます。お悩みの方は、ぜひ一度、オンライン相談を試してみてはいかがでしょうか?
まとめ
この記事では、植物工場の基礎知識から、ビジネスモデル、そして課題まで、幅広く解説しました。
植物工場は、従来の農業の限界を超え、食料問題や環境問題の解決に貢献する、未来への希望と言えるでしょう。
技術革新や社会的な認知度向上など、植物工場を取り巻く環境は、日々進化しています。
これからも、植物工場が、私たちの食生活と地球の未来を豊かにする技術として、発展していくことを期待しましょう。
- 植物工場ではどのような技術が使われている?
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植物工場では、センサー、空調設備、養液管理システム、人工光源、二酸化炭素施用装置、自動化システムなど、高度な環境制御技術が使われています。これらの技術を駆使して、植物の生育に最適な環境を作り出しています。
- 植物工場では何が作れる?
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植物工場では主に葉物野菜が栽培されています。レタスやホウレンソウ、サラダ菜などが代表的です。他にも、ハーブ類やイチゴなどの果物、苗物なども生産されています。ただし、人工光型の植物工場では、トマトなどの背丈が高くなる植物は栽培が難しいとされています。
- 植物工場は農業とは言えない?
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植物工場は、環境制御技術を駆使して植物を生産する施設であり、従来の土を使った農業とは異なります。しかし、植物を育てて食料を生産するという点では農業の一形態と言えます。最新技術を取り入れた新しい農業のあり方として注目されています。
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