【植物工場】養液栽培と根菜類は相性が悪い…その理由を解説

こんにちは、今村です

突然ですが、工場産の大根や人参って見たことありますか?
スーパーで全く見ないですよね。

レタスなどの葉物は、すっかり工場野菜として定着していて、よく見かけます。

植物工場では葉物野菜が主流。というか、ほぼ葉物野菜です。
一方、根菜類はどこの植物工場でも作っていません。

「もっと色々な野菜を作ればいいのに」

そう思いませんか?

それには理由があるのですが、そもそも植物工場で栽培できる野菜の種類って、かなり限定されてます。

根菜は、植物工場で栽培するには難しい部類なんですよね。
なぜなら、根菜類の特性と植物工場の養液栽培設備との相性が悪いから。

というわけで、この記事では、
なぜ養液栽培で根菜は難しいのか。の理由を解説します。

「そもそも、なぜ植物工場は葉物野菜ばかりなの?」
という方は、以下の記事も参考にどうぞ。

目次

根菜を植物工場で栽培の課題

根菜類とは、ニンジン、ダイコン、ゴボウなど、根の部分を肥大成長させ食用とする野菜の総称です。

根菜類は直根性で、地中深くまっすぐ伸びる太い根を形成するのが特徴。

この根の成長を支えるには、十分な深さと広さのある柔らかい培地が必要になります。

簡単に言うと、
根が大きくなれるだけの空間と支えてあげる力が無いと育てられない。ということ。

でも、既存の植物工場で主流の設備って、大体が葉物野菜に最適化されてます。
根菜を育てるのに必要な深さと広さを確保しにくいんですよね。

加えて、根域が液体で満たされると根への酸素供給が不十分になりがちなのも課題です。

根菜類に適した植物工場の栽培技術

まぁぶっちゃけて言いますと、根菜は土で育てるべきでしょう。

無理して植物工場で栽培しなくても良いかと思います。

どうしても根菜を植物工場で栽培するなら、養液土耕と噴霧水耕の2つの技術なら可能です。
これらは「植物工場」のイメージとは違う、養液が循環しないタイプの設備です。

養液土耕とは?

プランター等の容器に根の成長に十分な深さの土を入れ、点滴チューブ等で養液を供給する方法。土中で根を直根性に成長させられるため、根菜類の自然な成長に最適。

噴霧水耕とは?

養液の霧を根に直接当てて栽培する水耕栽培の一種。霧の粒径は数十μmと小さいため、根に水分や養分とともに酸素も十分供給できるのが特長で、根菜類栽培の新たな選択肢になり得る技術です。

これらの方法なら、根菜類に必要な培地空間と酸素供給を確保しつつ、養液の管理で肥大成長に必要な養分も十分供給できるわけです。

そもそも黒字にならない問題

この点が最大の問題だと思います。

植物工場での根菜栽培は、技術的には不可能ではないものの、全く儲かりません。

根菜類は葉物野菜に比べて生育期間が長く、回転率が低いのが特徴。
植物工場では、単位期間あたりの生産量、つまり回転率が収益に直結します。

根菜類はこの点で、他の作物に比べて不利なんですよね。
だから選ばれない。

レタスなどの葉物野菜が30〜40日程度で収穫できるのに対し、ニンジンは播種から収穫まで約70〜120日を要しますし、その差は歴然。

ビジネスとしてスタートされる植物工場事業において、

よし!利益は出ないけど、大根を栽培しよう!

という謎展開は絶対に起こらないわけです。

植物工場は、栽培技術や経済的な面で、現実的に栽培できる野菜が限られています。
例えば、他には穀物などもかなり厳しかったりしますよ。

この話は以下でも書いてるので、よければ参考にしてください。

植物工場における根菜類栽培の将来性

今のところ、従来の水耕栽培設備で根菜類が選ばれることはないでしょう。

とはいえ、未来永劫変わらないという話ではないです。

そもそも、根菜が選ばれないのは、根菜に特化した設備ではないから。
根菜の生育特性に特化した栽培設備が開発されれば、いくらでも可能性はあるわけです。

将来的には根菜類に特化した栽培設備が開発され、高付加価値な根菜類商品の販売戦略が確立。
根菜類の植物工場栽培が現実のものになるかもしれません。

しかし、その場合でも、他の高単価な作物との競合を考えると、根菜類が選ばれる可能性は決して高くないかもしれません。

根菜類の植物工場栽培が本格化するには、技術的・経営的な多くのハードルを克服する必要があるでしょう。

まとめ

植物工場での根菜類栽培は、根菜類の生育特性と現状の植物工場の設備・ビジネスモデルとの間に大きな隔たりがあるのが現状です。

直根性で肥大成長する根菜類には、従来の水耕栽培設備は適しておらず、養液土耕栽培や噴霧水耕といった新しい栽培技術の導入が必要になります。

植物工場での根菜類栽培は、技術的にも経営的にもまだまだ多くの課題を抱えています。

当面、植物工場は葉物野菜の安定供給に注力し、根菜類は露地栽培や施設栽培が担っていくのが現実的かもしれません。

ただし、将来的に根菜類に特化した画期的な栽培技術が開発され、高付加価値な根菜類商品の販売戦略が確立されれば、状況が変わる可能性もゼロではないでしょう。

野菜を植物工場で栽培するメリットは?

植物工場で野菜を栽培するメリットは、周年安定生産が可能なこと、品質が安定していること、無農薬栽培が可能なこと、省力化・自動化が進んでいること、などがあげられます。特に葉物野菜の栽培に適しています。

植物工場にはどんな種類がありますか?

植物工場には、太陽光利用型と完全人工光型の2種類があります。太陽光利用型は太陽光を主光源とし、必要に応じて人工光を補光するタイプ。完全人工光型は、太陽光を使わず、人工光のみで栽培するタイプです。このほか、育苗専用の植物工場もあります。

植物工場で作られる野菜は?

現在、植物工場で主に栽培されているのは、葉物野菜です。レタス、サラダ菜、ベビーリーフ、ホウレンソウ、コマツナなどが代表的です。果菜類ではトマト、イチゴなども栽培されています。一方、ニンジンなどの根菜類は、現状の植物工場での栽培は難しいとされています。

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