植物工場で根菜類を栽培することについて、現実的に解説

こんにちは、今村です

植物工場では葉物野菜の栽培が主流ですが、根菜類の栽培は一般的ではありません。それは、根菜類の生育特性と植物工場の主要な栽培設備との相性に課題があるためです。

今回は、根菜類の植物工場栽培における技術的可能性と、克服すべき課題について解説します。

目次

根菜類の特徴と植物工場栽培の課題

根菜類とは、ニンジン、ダイコン、ゴボウなど、土壌中の根の部分を肥大成長させ食用とする野菜の総称です。

根菜類は直根性で、地中深くまっすぐ伸びる太い根を形成するのが特徴です。この根の成長を支えるには、十分な深さと広さのある柔らかい培地が必要になります。

しかし、植物工場で主流の水耕栽培で一般的なパネル型の設備は、葉物野菜の栽培に適していますが、根菜類の根の伸長に必要な深さと広さを確保しにくいのです。加えて、根域が液体で満たされると根への酸素供給が不十分になりがちなのも課題の一つです。

根菜類に適した植物工場の栽培技術

もし根菜類を植物工場で栽培するなら、養液土耕栽培と噴霧水耕の2つの技術が有望です。

養液土耕栽培は、プランター等の容器に根の成長に十分な深さの土を入れ、点滴チューブ等で養液を供給する方法。土中で根を直根性に成長させられるため、根菜類の自然な成長に最適と言えるでしょう。

噴霧水耕は土を使わず、養液の霧を根に直接当てて栽培する水耕栽培の一種です。霧の粒径は数十μmと小さいため、根に水分や養分とともに酸素も十分供給できるのが特長で、根菜類栽培の新たな選択肢になり得る技術と言えます。

これらの方法なら、根菜類に必要な培地空間と酸素供給を確保しつつ、養液の管理で肥大成長に必要な養分も十分供給できるのです。

根菜類の植物工場栽培の収益性における課題

植物工場での根菜類栽培は、養液土耕栽培や噴霧水耕の技術で対応できる可能性はあるものの、収益性の面で大きな課題があります。

根菜類は葉物野菜に比べて生育期間が長く、回転率が低いのが特徴です。植物工場では、単位期間あたりの生産量、つまり回転率が収益に直結するため、根菜類の栽培はこの点で不利になります。

レタスなどの葉物野菜が30〜40日程度で収穫できるのに対し、ニンジンは播種から収穫まで約70〜120日を要することからも、その差は歴然としています。

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植物工場における根菜類栽培の将来性

現状では、従来の水耕栽培設備で根菜類が選ばれることはないでしょう。根菜類の植物工場栽培が実現するには、根菜類の生育特性に特化した栽培設備の開発が不可欠です。

将来的に根菜類に特化した栽培設備が開発され、高付加価値な根菜類商品の販売戦略が確立されれば、根菜類の植物工場栽培が現実のものになる可能性はあります。

しかし、その場合でも、他の高単価な作物との競合を考えると、根菜類が選ばれる可能性は決して高くないかもしれません。根菜類の植物工場栽培が本格化するには、技術的・経営的な多くのハードルを克服する必要があるでしょう。

まとめ

植物工場での根菜類栽培は、根菜類の生育特性と現状の植物工場の設備・ビジネスモデルとの間に大きな隔たりがあるのが現状です。直根性で肥大成長する根菜類には、従来の水耕栽培設備は適しておらず、養液土耕栽培や噴霧水耕といった新しい栽培技術の導入が必要になります。

植物工場での根菜類栽培は、技術的にも経営的にもまだまだ多くの課題を抱えています。

当面は、植物工場は葉物野菜の安定供給に注力し、根菜類は露地栽培や施設栽培が担っていくのが現実的なのかもしれません。

ただし、将来的に根菜類に特化した画期的な栽培技術が開発され、高付加価値な根菜類商品の販売戦略が確立されれば、状況が変わる可能性もゼロではないでしょう。

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野菜を植物工場で栽培するメリットは?

植物工場で野菜を栽培するメリットは、周年安定生産が可能なこと、品質が安定していること、無農薬栽培が可能なこと、省力化・自動化が進んでいること、などがあげられます。特に葉物野菜の栽培に適しています。

植物工場にはどんな種類がありますか?

植物工場には、太陽光利用型と完全人工光型の2種類があります。太陽光利用型は太陽光を主光源とし、必要に応じて人工光を補光するタイプ。完全人工光型は、太陽光を使わず、人工光のみで栽培するタイプです。このほか、育苗専用の植物工場もあります。

植物工場で作られる野菜は?

現在、植物工場で主に栽培されているのは、葉物野菜です。レタス、サラダ菜、ベビーリーフ、ホウレンソウ、コマツナなどが代表的です。果菜類ではトマト、イチゴなども栽培されています。一方、ニンジンなどの根菜類は、現状の植物工場での栽培は難しいとされています。

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