「CO2濃度1000ppmで呼吸困難!?」

こんにちは、今村です

このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。

まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。

目次

「工場内のCO2濃度は1000ppmです」

「工場内のCO2濃度は1000ppmです」

この一言を聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?

「おっ、植物にとって良い環境だな」
「1000って数字が大きいな、危険かも?」
「ppmって何だろう?」

実は、この何気ない説明が、ある日突然のドラマを引き起こすとは、私も思いもしませんでした。

植物工場の新人研修あるある

植物工場に新しいスタッフが入社すると、私はいつも同じルーティンで施設案内をします。

「ここが育苗室です」
「ここで定植をします」
「ここが収穫エリアです」

そして必ず説明するのが、「この施設では植物の生育を促進するため、CO2濃度を1000ppmに上げています」という点。

ほとんどの新人さんは「へー」と感心した顔をして聞いてくれます。正直、私たちベテランにとっては日常すぎて、特に気にも留めていない情報です。

あの日の出来事

それは平凡な火曜日の午後でした。

新人の山田さん(仮名)が工場内で作業中、突然、顔面蒼白になって倒れたのです。まるでドラマのワンシーンのように。

「山田さん!大丈夫ですか!?」

急いで外に連れ出し、休憩室でお茶を飲ませながら様子を見ていると、10分ほどで顔色が戻ってきました。

「すみません…なんだか急に息苦しくなって…」

山田さんは恥ずかしそうに言いました。

「救急車を呼びますか?」と聞くと、「いえ、もう大丈夫です」と言うので、念のため早退してもらいました。

意外な”犯人”

翌日、山田さんは元気に出社してきました。健康診断も問題なし。なのに、なぜ倒れたのか?

色々と話を聞いていくうちに、衝撃の事実が明らかになりました。

「実は…CO2濃度が高いと聞いて、ずっと息苦しいかもって思ってたんです」

なんと!犯人は「思い込み」だったのです。

「でも、1000ppmって、どのくらいの濃度なんですか?有害ですよね?」

その質問で、私はハッとしました。確かに、一般の人には「1000ppm」という数値が何を意味するのか、まったく分からないですよね。

「家の中と同じくらい」の魔法の一言

その日から、私の新人説明には必ず一文が加わりました。

「工場内のCO2濃度は1000ppmです。これは、家の中と同じくらいの濃度です」

たった一言で、新人さんたちの表情が「???」から「なるほど~」に変わるのが見えます。

実際、閉め切った部屋の中のCO2濃度は、人間の呼吸だけで簡単に1000ppmに達します。みなさんが毎日過ごしている自宅の寝室だって、朝には軽く1000ppmを超えているかもしれないのです。

思い込みの威力は科学を超える

人間の脳は面白いもので、「危険かも」と思い込むだけで、実際に体調不良を引き起こすことがあります。これは「プラセボ効果」の逆バージョン、「ノセボ効果」と呼ばれる現象です。

山田さんは、「CO2濃度が高い=息苦しい=危険」という思い込みから、実際に息苦しさを感じ、一時的に倒れてしまったのです。

考えてみれば、私たちは普段、大気中のCO2濃度なんて気にしていません。外の空気のCO2濃度が約400ppmで、工場内が1000ppmと言われても、その違いが実感できる人はほとんどいないでしょう。

言葉の力

ここで学んだのは、「専門用語の説明には、日常的な例えが必要」ということでした。

「1000ppm」という数字だけより、「家の中と同じくらい」という言葉の方が、はるかに強い安心感を与えます。

今では新人説明の際、ついつい詳しく説明してしまいます。

「工場内のCO2濃度は1000ppmです。これは家の中と同じくらいの濃度です。参考までに、潜水艦の中は通常4000ppm、国際宇宙ステーションは5000ppmくらいですが、問題なく生活できています。人体に影響が出始めるのは約5000ppm以上からなので、安心してください」

…と、ここまで詳しく説明すると、今度は「宇宙飛行士みたいですね!」と笑顔になる新人さんもいます。

植物工場あるある

実はこの「思い込みによる体調不良」は、植物工場あるあるの一つかもしれません。

高湿度の環境、LEDの特殊な光、循環する水の音…普段とは異なる環境に、知らず知らずのうちにストレスを感じる人は少なくありません。

それでも、「家の中と同じくらい」の一言で、新人さんの不安はほぼ消えてしまうのです。不思議なものですね。

「思い込み」の力は、時に科学を超える——これが植物工場で学んだ、意外な人間心理の教訓でした。

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