-
私が植物工場業界に入って感じたこと
-
植物工場の立ち上げ秘話 〜現場での絶妙な立ち回り方〜
-
塩素ガス vs 私の副鼻腔 汗と涙と鼻水の戦い
-
ボディブローを食らって、工場の床でブッ倒れた時の話
-
フル生産をしている植物工場が限界を超えるとき
-
チップバーンとの壮絶な戦い ~植物工場あるある~
-
「CO2濃度1000ppmで呼吸困難!?」
-
「改善改善って言うけど、私たちが遅いってこと?」
-
湿度100%の植物工場で遭遇したもの…
-
植物工場内でシャトルラン!体力の限界に挑んだ話
-
FAXー農業分野で大活躍の通信手段
-
環境制御対応型・人員配置・コスト計算統合ファイルver2.xlsx
-
植物工場を襲った虫の大軍との壮絶一日戦争録
-
工場立ち上げで体験した地獄の60時間労働
-
ガラスの雨が降る植物工場~蛍光灯崩壊の悲劇~
-
「作ったけど誰も見ない」悲しき作業マニュアルの新常識
-
気温が50℃の植物工場
-
ベッド掃除を忘れて1ヶ月間放置したときの話
「CO2濃度1000ppmで呼吸困難!?」


こんにちは、今村です
このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。
まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。
「工場内のCO2濃度は1000ppmです」
「工場内のCO2濃度は1000ppmです」
この一言を聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?
「おっ、植物にとって良い環境だな」
「1000って数字が大きいな、危険かも?」
「ppmって何だろう?」
実は、この何気ない説明が、ある日突然のドラマを引き起こすとは、私も思いもしませんでした。
植物工場の新人研修あるある
植物工場に新しいスタッフが入社すると、私はいつも同じルーティンで施設案内をします。
「ここが育苗室です」
「ここで定植をします」
「ここが収穫エリアです」
そして必ず説明するのが、「この施設では植物の生育を促進するため、CO2濃度を1000ppmに上げています」という点。
ほとんどの新人さんは「へー」と感心した顔をして聞いてくれます。正直、私たちベテランにとっては日常すぎて、特に気にも留めていない情報です。
あの日の出来事
それは平凡な火曜日の午後でした。
新人の山田さん(仮名)が工場内で作業中、突然、顔面蒼白になって倒れたのです。まるでドラマのワンシーンのように。
「山田さん!大丈夫ですか!?」
急いで外に連れ出し、休憩室でお茶を飲ませながら様子を見ていると、10分ほどで顔色が戻ってきました。
「すみません…なんだか急に息苦しくなって…」
山田さんは恥ずかしそうに言いました。
「救急車を呼びますか?」と聞くと、「いえ、もう大丈夫です」と言うので、念のため早退してもらいました。
意外な”犯人”
翌日、山田さんは元気に出社してきました。健康診断も問題なし。なのに、なぜ倒れたのか?
色々と話を聞いていくうちに、衝撃の事実が明らかになりました。
「実は…CO2濃度が高いと聞いて、ずっと息苦しいかもって思ってたんです」
なんと!犯人は「思い込み」だったのです。
「でも、1000ppmって、どのくらいの濃度なんですか?有害ですよね?」
その質問で、私はハッとしました。確かに、一般の人には「1000ppm」という数値が何を意味するのか、まったく分からないですよね。
「家の中と同じくらい」の魔法の一言
その日から、私の新人説明には必ず一文が加わりました。
「工場内のCO2濃度は1000ppmです。これは、家の中と同じくらいの濃度です」
たった一言で、新人さんたちの表情が「???」から「なるほど~」に変わるのが見えます。
実際、閉め切った部屋の中のCO2濃度は、人間の呼吸だけで簡単に1000ppmに達します。みなさんが毎日過ごしている自宅の寝室だって、朝には軽く1000ppmを超えているかもしれないのです。
思い込みの威力は科学を超える
人間の脳は面白いもので、「危険かも」と思い込むだけで、実際に体調不良を引き起こすことがあります。これは「プラセボ効果」の逆バージョン、「ノセボ効果」と呼ばれる現象です。
山田さんは、「CO2濃度が高い=息苦しい=危険」という思い込みから、実際に息苦しさを感じ、一時的に倒れてしまったのです。
考えてみれば、私たちは普段、大気中のCO2濃度なんて気にしていません。外の空気のCO2濃度が約400ppmで、工場内が1000ppmと言われても、その違いが実感できる人はほとんどいないでしょう。
言葉の力
ここで学んだのは、「専門用語の説明には、日常的な例えが必要」ということでした。
「1000ppm」という数字だけより、「家の中と同じくらい」という言葉の方が、はるかに強い安心感を与えます。
今では新人説明の際、ついつい詳しく説明してしまいます。
「工場内のCO2濃度は1000ppmです。これは家の中と同じくらいの濃度です。参考までに、潜水艦の中は通常4000ppm、国際宇宙ステーションは5000ppmくらいですが、問題なく生活できています。人体に影響が出始めるのは約5000ppm以上からなので、安心してください」
…と、ここまで詳しく説明すると、今度は「宇宙飛行士みたいですね!」と笑顔になる新人さんもいます。
植物工場あるある
実はこの「思い込みによる体調不良」は、植物工場あるあるの一つかもしれません。
高湿度の環境、LEDの特殊な光、循環する水の音…普段とは異なる環境に、知らず知らずのうちにストレスを感じる人は少なくありません。
それでも、「家の中と同じくらい」の一言で、新人さんの不安はほぼ消えてしまうのです。不思議なものですね。
「思い込み」の力は、時に科学を超える——これが植物工場で学んだ、意外な人間心理の教訓でした。
このコラムの掲載元は、現場力アップのノウハウ集
このコラムは、当サイトで購入できる以下のコンテンツに掲載したものです。
現場の収益性アップに役立つノウハウをビッシリ詰め込みました。
少々値は張りますが、コスパは高いと思います。
植物工場や施設栽培をやられている方は、確認必須です。


コメント