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こんにちは、今村です
このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。
まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。
異変の予感——灰色に霞む朝の工場
梅雨明け直後の朝、車から降りた瞬間に感じた「何かがおかしい」という直感は、私の人生で初めて正確に当たってしまった。
普段なら爽やかな朝の光景のはずの工場周辺が、なぜか霞んで見える。視界不良?花粉?
いや、違う。私が勤める植物工場を取り囲む水田と水路の上に、灰色の雲のようなものが漂っていた。しかしそれは雲ではなく、蚊とも蛾ともつかない小さな虫の大群だった。SFパニック映画さながらの光景に、私は思わず目をこすった。
「嘘だろ…これ、全部虫?」
現実となったSFパニック映画
季節の変わり目に一斉羽化するのは自然の摂理だ。だが今目の前で繰り広げられているのは、自然の摂理というレベルをはるかに超えた「虫の黙示録」と言っても過言ではなかった。
本来なら「外から侵入する虫は大きな問題にならない」というのが私の持論だ。当サイトでも、植物工場について書いた本にもそう記載している。その持論が一瞬で崩れ去る運命を、この時はまだ知る由もなかった。
工場の裏手、水路に面した入荷口には小さな隙間がある。毎日目にしているその隙間は、普段は「まぁ、これくらいなら問題ないでしょ」と見過ごしていたものだ。今思えば、それは「虫たちを招待する赤絨毯」のようなものだった。
招かれざる客の大行進
入荷口に駆け寄った私を出迎えたのは、まさに地獄絵図。無数の虫が小さな隙間を通り抜け、行列を作って侵入していく。床と壁には既に虫の「絨毯」が敷き詰められ、一部は空中を舞っている。
「これは…まずい」
現場にはまだ誰も到着していない。植物たちを守るのは私一人。パニックに陥りそうになる気持ちを抑え込み、とにかく行動あるのみと判断した。
作戦失敗——粘着シートの悲劇
最初に思いついたのは粘着シートだった。「これで食い止められるはず!」と意気込み、大量にセットしたものの、その結末は惨憺たるものだった。シートはあっという間に虫で埋め尽くされ、粘着面は飽和。そのうえを新手の虫たちが平然と歩いていく。まるで仲間の死体を踏み台にして進軍する冷酷な軍隊のようだ。
「これじゃシートじゃなくて、虫のための橋を作っているようなものだ!」
時計を見れば8時半。栽培エリアが虫で汚染される前に何とかしなければ。考えに考えた末に思いついた秘策は…掃除機だった。
秘密兵器、その名は掃除機
事務所から大型掃除機を引っ張り出し、一か八かの勝負に出た。
「さあ、かかってこい!」
虫たちの大群に向かって掃除機のノズルを構える私の姿は、きっと横から見れば滑稽そのものだっただろう。だが今はそんなことを気にしている余裕はない。掃除機のうなり音と共に、虫たちが渦を巻いて吸い込まれていく。
「おお、効いてる、効いてる!」
まるでゴーストバスターズのように、私は掃除機を武器に反撃を開始した。床に落ちる虫、壁にへばりつく虫、空中を舞う虫…全方位から襲いかかる敵を相手に、私はまさに孤軍奮闘。汗だくになりながらも掃除機を振り回す。
意外な展開——敵軍の急な撤退
昼過ぎになると、外の虫の大群が徐々に活動を停止し始め、新たな侵入者も減少。夕方には完全に戦闘終了となった。彼らの寿命は短く、大発生した日のうちに一生を終えるのだ。
その日の夕方、全員で工場内の大掃除を終えた後、私たちは疲労困憊ながらもどこか達成感に満ちた表情で事務所に集まった。
「皆さん、今日は本当にお疲れ様でした。植物たちは無事です」
私の報告に、全員から安堵のため息が漏れた。
「植物工場では外からの虫は問題にならない…」というのが私の持論。
「ただし、百年に一度の虫の大軍襲来は例外だ」と私は付け加えた。
その日の帰り道、私は考えた。
自然の力の前では人間はいかに小さいか。
掃除機の中には数え切れないほどの虫たちが眠っている。彼らの短い一生に黙祷を捧げつつ、「次は絶対に隙間を作らないぞ」と心に誓った私であった。
このコラムの掲載元は、現場力アップのノウハウ集
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植物工場や施設栽培をやられている方は、確認必須です。


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