気温が50℃の植物工場

こんにちは、今村です

このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。

まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。

目次

植物工場サウナ計画

「あー、今日も一日お疲れ様でした」

新築の植物工場でシステムテストを終え、私は満足げに伸びをしながら帰路についた。頭の中では今夜の晩酌メニューを考えていた。冷えたビールと唐揚げ、最高の組み合わせだ。

その日は朝から夕方まで、新しい環境制御システムの動作確認をしていた。空調、照明、養液供給…とにかく全てが正常に動くかを確認する地道な作業だ。

「よーし、これで明日からの稼働も万全だな!」

テストは無事に完了し、私はホッとした表情で車を走らせた。

家に着くなり、待ちに待ったビールを開け、ソファに深々と腰を下ろす。テレビをつけ、唐揚げをかじり、幸せなひとときを満喫していると…

「ん?あれ?」

ビールをゴクリと飲み込んだ瞬間、突如として不穏な違和感が脳裏をよぎった。

「あれ…栽培室の照明…消したっけ?」

リモコンを手にしたまま、私は固まった。脳内で今日の帰り際の動作を必死で思い出そうとする。

「確か…エアコンのテストをして…養液のテストをして…照明のテストをして…」

照明のテストをしたところまでは鮮明に覚えているが、その後消したかどうかの記憶がない。

「あー、もう!気になって仕方ない!」

唐揚げを半分かじったまま放り出し、慌ててパソコンを起動した。幸い、この新しいシステムはリモートアクセスが可能だ。

「やっちまった…」

画面に表示された遠隔監視システムの表示を見て、私は絶句した。

「やっぱり…点けっぱなしじゃないか…」

照明のステータスは「ON」のまま。思わず額を叩く。

「まあ、電気代が少しかさむだけだし、明日の朝に行けば…」

そう思った矢先、目に飛び込んできたのは、恐ろしい数字。

「フィンランドサウナ」爆誕

「気温:50.0℃」

目を疑った。50℃?これはサウナではないか。しかも50℃というのはセンサーの上限値。実際はもっと高温になっている可能性もある。

「うわぁぁぁぁ!」

思わず声が出た。

「これ、このままじゃシステムが壊れる!」

慌ててマウスをカチカチと操作し、照明をOFF、エアコンをON、設定温度を最低に。画面とにらめっこしながら、数値が下がるのを祈る。

「下がれ…下がれ…」

まるで呪文を唱えるように繰り返す。

「温度計は見た、恐怖のカウントダウン」

49℃…48℃…45℃…

ゆっくりと下がり始める温度。

幸い、この工場はまだ本格稼働前。栽培中の作物は一つもなかった。もし作物があったら、間違いなく全滅している。

考えただけでゾッとする。想像してみてほしい。翌朝、何も知らずに出勤してきた社員たちが見る光景を。

「おはようございま…あれ?なんか変な匂いがする…」

蒸し茹でになった野菜の香りが漂う栽培室…。思っただけで冷や汗が出てくる。

その後、無事に温度は正常値まで下がり、大惨事は避けられた。

翌朝、早めに出社して念入りにシステムをチェックしたが、幸いにも機器に異常はなかった。

「植物工場あるある」

実はこういった「うっかりミス」、結構ありますよね。照明の消し忘れ、養液の供給ミス、温度設定の入力ミス…。

どれも「あ、やっちゃった」というレベルのミスなのに、
運が悪いと「全滅」という恐ろしさ。

植物工場あるあるの一つかもしれないが、できれば経験したくないあるある。今日も私は退社前、必ずチェックリストを見て、「50℃サウナ事件」を思い出すのだった。

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