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環境制御対応型・人員配置・コスト計算統合ファイルver2.xlsx


こんにちは、今村です
このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。
まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。
エクセル職人の叫び
「おい!このシートが動かないんだけど!」
会社のどこかで聞こえるこの悲鳴、皆さんの職場でも耳にしたことがありませんか?その声の主は、たいてい複数のシートが絡み合い、マクロと複雑な関数が蜘蛛の巣のように張り巡らされた”伝説級エクセルファイル”と格闘している社員です。
そして私は「エクセル職人」と呼ばれる絶滅危惧種の一人です。
なぜこんな状況になったのか?
それは簡単です。「システム化したいけど予算ないから、エクセルでなんとかして」という言葉から全てが始まりました。当初は「これくらいなら簡単だろう」と思ったものです。甘かった…
職人技の末路
長年にわたり、私はエクセル職人として、数々の「モンスター・エクセルファイル」を生み出してきました。最初はシンプルな収穫スケジュール表だったものが、いつの間にか「環境制御対応型・人員配置・コスト計算統合ファイルver2.xlsx」という名の怪物に進化していたのです。
「これは10以上の別シートを参照してるから触らないで」と同僚に説明したとき、彼の目に浮かんだ恐怖の表情は今でも忘れられません。その日から、そのファイルは「触れてはいけないエクセル」として社内で伝説になりました。
現実的な問題として、こういったファイルは作った本人にしかメンテナンスできません。いや、正確には「作って3ヶ月以内の本人」にしかメンテナンスできないのです。それ以降は作者である私ですら「なぜこんなコードを書いたんだ?過去の自分よ、コメントを残しておいてくれ!」と叫ぶことになります。
システム化という夢
そこで浮上するのが「社内システム化」という救世主です。
「専用システムを導入すれば、もうエクセル地獄とはおさらばだ!」
この幻想、一度は誰もが抱きますよね。確かに、ちゃんとした仕様書があり、専門家が設計したシステムがあれば、多くの問題は解決するでしょう。私自身、夢に見るほど憧れていました。「プログラムが自動で収穫量を予測し、最適な作業者配置を計算し、発注まで行ってくれる…」
しかし、現実はそう甘くありません。
システム化の落とし穴
植物工場の現場というのは生き物相手の仕事。予想外の事態が日常茶飯事です。
例えば、ある日突然「今日から栽培品目を増やして、作業工程も追加するぞー。」と現場監督から言われます。エクセルなら、その場で新しい列を追加して対応できます。しかし専用システムだと?「システム改修依頼を出して、予算承認を得て、開発者のスケジュールが空くのを待って…」という間に予定していた出荷時期はとっくに過ぎているでしょう。
あるいは、「LEDライトの配置を変えたから生育予測アルゴリズムを調整したい」という時も同様です。エクセルなら職人技で即日対応。システムなら…想像するだけで頭が痛くなります。
一度、他部署がシステム化に成功した話を聞いて羨ましく思ったことがありました。しかし半年後、彼らは「システムが現場の変化に対応できない」と嘆き、結局「システムの横でエクセル管理」という二重作業の悪夢に陥っていたのです。
完璧なシステムという幻
理想的には、完璧なシステムが一発で作れれば素晴らしいでしょう。しかし、それには膨大な時間と予算が必要です。しかも、植物工場は各社で設備仕様が全く異なります。A社の成功事例をそのままB社に適用できないのです。
「汎用的な植物工場システムがあれば…」という願いは、「一度着たら全ての人にぴったり合う服」を求めるようなものです。素敵ですが、現実味に欠けます。
そして最大の皮肉は、システム開発中の「つなぎ」として作られたエクセルファイルが、いつの間にか「なくてはならない基幹システム」に昇格してしまうことです。「一時的な対応」のはずが5年経った今も現役バリバリ…というファイルが私のパソコンには山ほどあります。
未来への希望
とはいえ、自動化技術は確実に進歩しています。センサー技術やAIの発展により、以前は人間の判断が必要だった作業も徐々に自動化されつつあります。
私の夢見る未来は、人間の柔軟性とシステムの安定性が見事に融合した植物工場です。エクセル職人の技とプログラマーの知恵が合わさり、現場の変化にも対応できる「賢いシステム」が実現する日が来るかもしれません。
その日が来るまで、私はエクセルと格闘する日々を送ることになりそうです。皆さんの中にも同志がいることを願って…。
…そういえば先日、「最終版確定版これ以上マジで変更なし_ver5.3.xlsx」というファイル名で保存したエクセルが、今朝には「最終版確定版これ以上マジで変更なしver5.3修正済_新.xlsx」に変わっていました。エクセル職人の戦いに終わりはないのです。
このコラムの掲載元は、現場力アップのノウハウ集
このコラムは、当サイトで購入できる以下のコンテンツに掲載したものです。
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少々値は張りますが、コスパは高いと思います。
植物工場や施設栽培をやられている方は、確認必須です。


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