ボディブローを食らって、工場の床でブッ倒れた時の話

こんにちは、今村です

このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。

まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。

目次

朝は順調、油断大敵

植物工場で働いて3年目。安全講習では聞いたことのない”育苗箱KO”という現象に遭遇してしまった日のことを、今でも体が覚えています。

その日は朝から絶好調でした。目覚ましが鳴る前に目が覚め、いつもより多めのコーヒーで武装し、「今日も一日がんばるぞ!」と出勤した矢先の出来事です。

3年目ともなると、育苗箱を持って栽培ラックの間を移動する技術は、もはや芸術の域。両手で育苗箱を水平に保ち、まるでウェイターがフルコースのディナーを運ぶように優雅に、かつスピーディーに移動できると自負していたのです。

悲劇の始まり、ベテランの過信

「あと20箱運べば昼休憩だ」

そう思った瞬間から、不幸の序曲は始まりました。いつも通り育苗箱を胸の前で水平に抱え、栽培ラックの間の狭い通路—そう、肩幅よりもわずか10センチほど広いだけの絶壁のような通路を小走りで進んでいました。

左右には美しく整列した栽培ラックの緑が並び、LEDの光が眩しく照らしています。植物の香りと、わずかに漂う養液の匂い。そんな日常風景の中、私は自分のスキルを過信していました。

「この狭さなら、目をつぶっても通れるさ」

まさに傲慢の極みです。そう思った直後でした。

運命の瞬間、まさかの出会い

ガチャーン!

何かにぶつかる鈍い音が、無音の栽培室に響き渡りました。何が起きたかわからず、一瞬時が止まったように感じました。

「あれ?」

胸の前で大切に抱えていた育苗箱の角が、栽培ラックにぶつかったのです。そして物理の法則に従って、反動で反対側の角が…そう、私の人生で最も無防備だったみぞおちに、ピンポイントで突き刺さりました。

K.O.の瞬間、星空の輝き

「ぐはっ!」

漫画のような声が喉から漏れました。まるでプロボクサーに急所を突かれたかのような衝撃。内臓が一斉に「退職届」を提出したような感覚に襲われました。

視界が狭まり、星がチカチカと輝き始めます。(いや、それは照明です)呼吸ができなくなり、膝から崩れ落ちる自分がスローモーションで見えました。

冷たいコンクリートの床に横たわりながら、頭の中では不思議なことに「育苗箱、落とさなかったかな?」という仕事人としての最後のプライドだけが残っていました。

悲惨な復活劇

気がつくと、私は衛生服を着たままコンクリートの床で横になっていました。額には冷や汗、足はガクガク。周りには誰もおらず、自分の無様な姿を目撃した人がいないことだけが救いでした。

「これはマズイ…」

フラフラと立ち上がり、まるで初めての酔っ払いのように壁を伝いながら事務所へと向かいました。同僚たちの前で倒れるわけにはいきません。植物工場のベテランとしてのメンツがあります。

事務所のソファに横になると、同僚が心配そうに声をかけてきました。

「大丈夫?顔色悪いよ?」

「ああ…ちょっと育苗箱と熱い戦いをしてきたんだ…」

教訓と明日への希望

あれから数年経った今でも、栽培ラックの間を通るたびに、みぞおちがかすかに痛むような気がします(心の傷かもしれません)。

皆さんも、どんなに熟練した作業でも油断は禁物です。私のように「育苗箱ノックアウト」の被害者にならないよう、常に気を引き締めて作業してください。

そして、もし同僚が突然床に倒れていたら、おそらく彼も私と同じ「育苗箱」の洗礼を受けたのだと、温かい目で見守ってあげてください。

…そういえば、あの育苗箱、今でも工場のどこかで私を狙っているかもしれません。今日も私は警戒を怠らず、みぞおちを守りながら植物工場へと向かうのでした。

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