湿度100%の植物工場で遭遇したもの…

こんにちは、今村です

このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。

まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。

目次

「水中農業!?」

「本日はよろしくお願いします」

取引先の植物工場を訪問した日、私はスーツの襟元を整えながら丁寧にお辞儀をしました。施設改善のコンサルとして呼ばれたこの日、私の目に飛び込んできたのは想像を絶する光景でした。

熱帯雨林?サウナ?いいえ、植物工場です

栽培室のドアを開けた瞬間、まるで壁に激突したかのような感覚に襲われました。

「む、むし暑い…!!!」

息をするだけで肺が水を吸い込んでいるような感覚。眼鏡は即座に真っ白に曇り、視界ゼロに。

そして足元から聞こえる不穏な音。

ピチャピチャ、ピチャピチャ。

眼鏡を拭いて見ると、足元は1センチほどの水没状態。栽培ベッドの間を小川が流れているような状況でした。

「あの…この水は…?」

「ああ、これですか?壁の結露が溜まってるだけですよ。」

工場長は「コーヒーでも飲みます?」と言うような軽い調子で答えました。

「これは…魚の養殖場ですか?」

湿度計を見ると、なんと表示は「99%」。本来なら限界値のはずなのに、明らかにそれを超えた湿度を感じます。もはや湿度というレベルではなく、霧の中にいるような感覚です。

壁を見れば、まるで滝のように水が流れ落ちています。天井からもポタポタと水滴が落ちてきます。

「除湿設備は…?」

「ないんですよ。」

その答えに、私は心の中で「それは大問題では?」と叫んでいました。

「あの不思議な生物の正体は…」

栽培棚を見て回っていると、ある奇妙な植物を発見しました。

「これは…新しい実験品種ですか?」

ウレタンから一本の細長い茎が伸び、その先に小さな葉が数枚ついています。見た目はニンジンの葉に似ていますが、どう見ても違う。まるで水中から必死に顔を出そうとしている水草のような姿。

工場長は少し照れくさそうに答えました。

「いえ、これがレタスなんです」

「…え?」

「フリルレタスです」

私は目を疑いました。レタスといえば、葉がモコモコと広がる姿を想像しますが、目の前の「何か」はとても商品化できるものには見えません。まるで植物界のゾンビのような姿。

その瞬間、植物生理学の授業で習った「徒長」という言葉が脳裏に浮かびました。高湿度と弱い光によって節間が異常に伸び、本来の姿とはかけ離れてしまった状態です。

「緊急救援作戦」

状況は明らかでした。この植物工場は「水族館化」しています。

施設内に除湿機はありませんが、幸い複数台のエアコンが設置されていました。応急処置として、冷房と暖房を同時に運転するという荒技を提案。

「同時に?それって電気代すごいんじゃ…」

「今はそれどころじゃありません!これは植物の救出作戦です!」

そして数時間後、奇跡が起きました。湿度計の数値が少しずつ下がり始めたのです。95%…90%…そして翌日には80%台まで改善。

「その後…」

後日、正式に除湿機を導入し、排水システムも整備しました。そして1ヶ月後に再訪問すると…

「これが本当のレタスか…」

以前の「水中生物」が、立派なレタスに成長していました。

私はこの経験から学びました。植物工場において「適切な湿度管理」がいかに重要か。

…時々思い出します。あの不思議な「水中レタス」の姿を。植物の生命力の強さと、同時に繊細さを教えてくれた、忘れられない植物工場体験でした。

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