「作ったけど誰も見ない」悲しき作業マニュアルの新常識

こんにちは、今村です

このコラムは、私の現場経験を中心に書いてます。
10年以上も現場にいると、ホント色々ありますよね。思い出したことを、気ままに書いてます。

まぁ、「へー、他の工場ってそうなんだぁ」みたいな、気楽な感じで読んでください。

目次

「レタスの収穫の仕方、前に聞いたやり方と違います」

「レタスの収穫の仕方、前に聞いたやり方と違います」

私が植物工場の現場を見回っていた時のこと。新人さんが恐る恐る尋ねてきました。確かに同じレタスなのに、担当者が変わると微妙に作業方法が違う。これは植物工場に限らず、多くの職場での「あるある」ではないでしょうか。

研修という名の「願望」

10年以上、植物工場の運営支援と現場教育に携わってきた私の結論は、ある意味シンプルです。
「会社が行う『教育』の大半は願望に過ぎない」。

華やかな研修スライドや分厚いマニュアルを作っても、その内容が現場に定着する確率は驚くほど低いのです。ある大手植物工場では、3ヶ月かけて作り上げた作業マニュアルが、完成後わずか2週間で書棚の奥に追いやられていました。

もちろん「対象者に寄り添った充実したカリキュラム」があれば話は別です。しかし、そんな理想的な研修のためにコストをかける余裕が、今の日本企業にどれだけあるでしょうか。

「教えたい」VS「教える余裕がない」の永遠の矛盾

現実の現場では、こんな会話が繰り返されています。

「新人が同じミスを繰り返してる!ちゃんと教育してくれ!」(管理職)
「教える時間がないんですよ…」(現場リーダー)

結果として多くの企業が選ぶのは、いわゆる「作業標準書を作ること」です。

私も正直な話、クライアント企業から「教育を何とかしてほしい」と相談されると、まずは「作業標準書を作りましょう」と提案してきました。時間がない中での妥協策として。

読まれないマニュアルの悲しい現実

しかし、冷静に振り返れば明らかです。

作業標準書は読まれない。

私が関わった植物工場の一つでは、丁寧に作った52ページの作業マニュアルのアクセス履歴を調べたところ、実際に開いた従業員は全体の23%しかいませんでした。しかも最後まで読んだのはたったの7%。これが現実です。

読んでもらえたとしても、「葉のを左で少し持ち上げ、右手で…」という文章を読んだだけで、実際の作業に反映できる人はどれだけいるでしょうか。

「見る」が「やる」に変わる瞬間

ところがある発見が私の常識を覆しました。

葉物野菜の収穫作業で、新人の生産性が一向に上がらず悩んでいたとき。私は試しに、熟練者の作業をスマホで3分だけ撮影し、新人に見せてみました。特別な編集も解説も加えません。ただひたすら「速い手元」を見せるだけ。

結果は驚くべきものでした。翌日には新人の作業スピードが約30%アップしたのです。

「文字で読む」より「映像で見る」方が、特に「速さ」や「リズム」が求められる作業においては圧倒的に効果的だったのです。

明日から試せる動画活用術

動画教材のメリットは単純明快です。

  1. スマホ一台あれば今すぐ始められる
  2. 熟練者の「なんとなくのコツ」が伝わる
  3. 繰り返し見ることで徐々に身につく

特に「手早さ」が求められる作業には絶大な効果があります。逆に複雑な判断や理論が必要な場合は、動画だけでは不十分かもしれません。

私が最近関わっている苗の植え付け作業では、2分間の動画を導入しただけで、新人の作業効率が1週間で1.5倍になりました。マニュアルを何度読んでも伝わらなかった「リズム」が、映像を通じて自然と身についたのです。

明日、あなたが試せること

さあ、ここまで読んだあなたにも、明日から試せることがあります。

  1. 最も効率的に作業している人を見つける
  2. スマホで2〜3分、その作業風景を撮影する
  3. 特別な編集はせず、新人に「ただ見てもらう」
  4. 効果を観察する

文字マニュアルと動画、両方を使うのがベストですが、時間とリソースが限られているなら、まずは動画から試してみてはいかがでしょうか。

あなたの職場の「当たり前」が、明日から少し変わるかもしれません。

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